西島秀俊と斎藤工が語る三浦友和
―― 年齢もキャリアも異なるお三方が共演されて、それぞれどんな印象を持たれましたか?
三浦 ふたりは今、一線を走られている人たちなので、いろんな意味で刺激を受けますよね。僕は斎藤さんとは初めてで、西島さんとは2度目なんだけど、僕らが目出し帽の覆面をしてるシーンがあるんですけど、顔がわからない。だから、スタッフが代わりに演って僕たちがアフレコすればいいじゃないかって不平不満を言ったんだけど(笑)。「三浦さんは覆面かぶっててもわかりますよ」とか2人に言われてね。
西島 それはわかりますよ(笑)。
斎藤 覆面をした友和さんが、本当に一瞬しか映らない長回しがあって、もしかしたら他の方でも成立したかも(笑)と思うような場面でも、実際の友和さんは苦情も言うことなく、現場全体を捉えてらっしゃる静かな佇まいが素晴らしいなと思いました。
三浦 だから、あんまり会話もしなかったんですよ。現場って大体そうなんですけど。
西島 『ストロベリーナイト』の映画のときも、友和さんが演技しているというと、撮影中もみんな見に行くんですよ。今回は友和さんが、こんなグダグダした役をされるんだと思って。それで現場に行ったら、本当にグダグダされていて(笑)。ご本人とのギャップにすごくびっくりするんですよね。
これまでに何度かご一緒して、すごくキチッとされているイメージがあるので。僕も役に入ってるつもりですけど、友和さんには毎回驚かされるし、いろんなものを感じさせていただいています。
斎藤 お二人の作品を進行形で見てきた人間なので、キャスティングをうかがったときには震えました。なのに、友和さんに最初に言う台詞が「ジジイ、黙れ」という一言で(笑)。
三浦 そうだった?
西島 それは、ハードルが高い(笑)。僕がすごく好きだったのは、友和さんと2人で立ちションするシーン(笑)。台本上は、あんなシーンじゃないんですよ。本当にもう行き詰まっているのに、そんな瞬間になると、すごく生き生きする役なんだっていうことを、ちゃんと作って僕に投げてくださる。
斎藤 西島さんもそうなんですけれど、友和さんは、静と動で言ったら“静”の部分に、世界が広がっていく奥行きみたいなものがあるなと。それを現場で肌感覚で体感できたのが貴重だなと思いました。
西島 工くんは、現場でもそうですし、こうやって取材していてもそうですけど、視点がちょっと普通の人とは違う。出る側だけじゃなくて、作り手でもあるし、映画業界全体のことを常に考えていて。会って話を聞いていると、すごく刺激を受けることがたくさんあります。
斎藤 西島さんとは、この現場は『ドライブ・マイ・カー』の撮影後だったので、同じようにレトロな車というものがキーになってくる作品だったりすることもあって、それぞれの現場の違いみたいな貴重なお話をたくさん聞かせていただきました。『シン・ウルトラマン』の現場でもそうだったんですが、もう学びしかないです。