Sep 09, 2022 interview

西島秀俊×斎藤工×三浦友和インタビュー 感情移入しづらいキャラクターだらけなのに、わが事のように思える瞬間に満ちた『グッバイ・クルエル・ワールド』

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ある夜、水色のフォード・サンダーバードの車内で交わされる危ない話。年齢も境遇もバラバラな5人組がこれから実行するのは、ヤクザ組織の資金洗浄現場の襲撃。互いに素性も知らない連中は1億円近い大金を強奪することに成功する。ところがヤクザは刑事を雇って金を取り返しに動き始め、分け前をもらえなかった強盗団の1人は一発逆転の復讐を決意する。

強烈なキャラクターたちを魅力的に輝かせ、日本映画ばなれしたクライム・サスペンスを監督したのは、『MOTHER マザー』『セトウツミ』の大森立嗣。脚本は『そこのみにて光輝く』『死刑にいたる病』の高田亮によるオリジナル。

一夜限りの強盗団には日本映画の中心を担う俳優たちが集結。元暴力団員の安西には西島秀俊、何でもアリの極悪犯罪者・萩原に斎藤工、左翼くずれの労働者・浜田に三浦友和。さらに玉城ティナ、宮沢氷魚、宮川大輔といった顔ぶれが揃い、強盗団を追う刑事に大森南朋、ヤクザ組織のトップには奥田瑛二が控えている。

西島秀俊さん、斎藤工さん、三浦友和さんに、多彩なキャストが揃った異色のエンターテインメントの撮影秘話を、そして年齢もキャリアも異なる3人の共演についてうかがいました。

三者三様のキャラクター作りとは?

―― 今回お三方が演じられたのは、それぞれ強烈な役でしたが、自分の役について、どう思われましたか。三浦さんが演じた浜田は、左翼くずれの元全共闘という過去がありました。

三浦 こういうバックボーンは面白いなと思いましたね。自分の背景、プロセスが分かるのもありがたかったですしね。浜田は自分では手を下さないという、非常にずるい男なんだけど、でも若い男が集まってくるんだから相当な策略家ですよね。人望はないんですけどね(笑)。

でも、人望のない男のところに集まってくる人たちっていうのが、また魅力的で。この映画は、そういう集団の面白さがあると思いました。

西島 悪い道から抜けようとしても抜けられないっていうキャラクターは、結構普遍的にあると思うんですけど、僕が演った安西も、もしかしたら、10年、20年前だったら生きる場所があったと思います。けれどもう、完全にどうしようもない、生きようがないという風になっているところが現代的で。そういう部分をうまくつかまえて演技できたらなと思ってやっていました。

―― 斎藤さんが演じた萩原は、過去が見えないキャラクターでした。

斎藤 ただ、情報は台本に描かれていたので、それをもとに設計していくという感じではありました。この作品のなかの、一時的に徒党を組んで目的を達したら解散するという関係性は、映画を作るということと少し似ていたなと思います。

俳優業ってなにかに属しているようで、すごく孤独で寂しさみたいなところがあるのも、状況は違えど、この登場人物たちと近いんじゃないかと思って、リアルな感じを味わいながらやっていた気がします。

―― それぞれのキャラクターを、異なる色付けをされていたのが印象的でした。三浦さんは、髪やヒゲで老けを強調されていました。

三浦 全共闘世代の役なので今より老け込まないと、というのがあったので。ヒゲは本当に白いので、見た目はこんな感じかなという。

斎藤 僕は、友和さんや西島さんが演じるキャラクターに対して、自分の役割はこのカラーリングだなというところを、監督と足し算や引き算をしていって、結構盛りだくさんなルックになったかなと思いますね。

西島 僕は、見ている人がわからなくてもいいので、ちょっと気を抜いているときに、安西の体に入れ墨が入っているのが見えてほしいということをやりました。こいつはどうやっても一般社会に戻ることは難しいだろうなという象徴として。