Mar 08, 2018

インタビュー

岩田剛典、単独初主演映画『去年の冬、きみと別れ』を語る。共演の斎藤工・北村一輝から受けた刺激とは?

 

「教団X」で知られる芥川賞作家・中村文則の同名小説を映画化した予測不能のサスペンス『去年の冬、きみと別れ』。原作者・中村文則と瀧本智行監督の対談に続き、主人公・耶雲恭介を演じている岩田剛典にインタビューを敢行した。今作で、ある事件の容疑者となった天才カメラマンを取材する記者で、物語の語り手でもある耶雲の複雑な内面と秘められた感情を、繊細かつ大胆に表現している彼に、瀧本智行監督のことや共演者についてなど、撮影秘話を聞いた。

 

小説ならではのトリックと素晴らしさがある原作、難解な部分が明確になった映画版

 

──最初に、映画をご覧になっての率直な感想をお聞かせください。

いろいろな想いがあって客観的には観られなかったので、他の皆さんはどういう風に観ていたのかなと思いました(笑)。まだ公開前ですが、周りの方の反応はどうだろうと今もドキドキして気になっています。ストーリーの展開も知っていますし、自分が出演しているから画の雰囲気はある程度想像がついていましたけど、完成させるのはさぞ難しかっただろうと改めて思いましたし、監督の手腕はやっぱり素晴らしいと感じました。役者一人ひとりがちゃんとキャラクターになっていたのも監督のディレクションありきですし、監督が明確にしていた画が綺麗にハマった作品になっていると思いました。

 

 

──原作は読まれましたか?

はい、もちろん読ませていただきました。原作は、今、どの時系列で誰の言葉として綴られているのかを考えさせられるような、小説ならではのトリックが散りばめられていて、初見では何となくしか理解できてなかったと思います(笑)。何回も読み直して、このシーンはこうなるのかなとか予想するのが楽しかったですね。最初は純粋に、こんなに難しいストーリーをどうやって映像にするのかなと思いました。

──映画は原作からアレンジされていますよね。

そうですね。映画では耶雲目線でストーリーが進んでいくし、より噛み砕いているので若い方たちも理解しやすいと思うんですけど、原作では耶雲がメインキャラクターとしてフィーチャーされているわけではないんですよね。それに、小説では難しかった部分が映画では明確にされているところがあるので、脚本はより分かりやすくなっていました。原作は小説ならではの文学的な素晴らしさがあると思います。

 

 

──原作者の中村文則さんから何か言われたことはありましたか?

映画化が決まった時点で、「映画は自分のものではない、小説は小説、映画は映画の良さがある」とおっしゃっていたんです。映画の初号試写を一緒に観させていただいたんですけど、終わった後に感動されていた様子を見て、すごく嬉しかったです。

 

求められた“逆算した芝居”、すべてをシャットダウンして没頭した撮影

 

──耶雲を演じる上で一番大切にしていたものは?

役作りももちろん大事でしたけど、一番意識していたのは、緻密な組み立てで成り立っているパズルのような作品の設計図を最も理解してくださっている瀧本監督の欲しい芝居、欲しい画にいかにフィットさせていくかという作業でした。自分の感情に任せて芝居するというより、あの結末に持っていくための逆算した芝居を求められていたんです。そういう経験は初めてでしたし、そこは自分だけではさじ加減が計り知れないところがあったので、監督の頭の中をずっと追っているような感覚でしたね。

 

 

──緻密に計算された芝居の中で感情を表現する作業ということですね。

そうですね。だからこの作品の撮影期間中は、作品以外のところで刺激を受けて感情が揺さぶられないように、すべてをシャットダウンしていました。そこまでしない役者の方もいると思うんですけど、自分はそういう風にするタイプなんだなと思いました。

──他のことをシャットダウンするほど、作品に没頭されていたんですね。

いつもはだいたいいくつかのお仕事を並行していることが多いんですが、この期間は映画だけに没頭できる環境で集中できたのですごく幸せでした。こういう作品だからこそ妥協なくやりたかったですし、もっとやれたんじゃないかとか、やり残したことがある、という後悔の気持ちがあると一生引きずっちゃいますから。未熟なりにも、自分の現段階でのポテンシャルは出せたかなと思います。

 

 

──クランクアップの時はどんな気持ちになったのでしょう。

大変だったのはスタッフも含めて皆同じで、称え合いたい気持ちでしたね。その場でプロデューサー陣や監督とビールで乾杯したんですけど、乾杯だけして「すごい現場でしたね」みたいな話をしました。終わったらで終わったで切り替えはしましたが、それまでの張りつめた緊張感からは解放されたような感覚だったかもしれません。