Nov 23, 2019 interview

「断られたことで海外を目指そうという覚悟ができた」―斎藤工が語る映画への熱き想い

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“映画的な自由度”を大切にしたい

――昨年、『カメラを止めるな!』(17年)が受賞したプチョン国際ファンタスティック映画祭のヨーロッパ審査員特別賞を受賞するなど、狙いどおり海外で幸先のよいスタートを切りました。

海外のファンタスティック系の映画祭に行くと、盛り上がりがすごいですよ。園子温監督の『リアル鬼ごっこ』(15年)で、スペインのシッチェス・カタロニア国際映画祭に参加した時は、女子高生たちがまっぷたつになるシーンで上映会場全体が大熱狂するわけです。歓声を上げたり、手拍子を叩いたりするんです。やっぱり、みんなこれまで観たことのない世界を描いた作品を待ち望んでいるんだなぁと実感できるんです。今回は永野さんもそうですし、清水監督に対しても海外からオファーが来るかもしれない。そんな最高の作品ができたと思っています。今年公開されたドキュメンタリー映画『主戦場』(18年)の中で日本の報道の自由度が先進国の中でかなり低いことが触れられていましたが、日本国内にいると気づかずにいることが多いんです。

――齊藤さんのお話を聞いていると、MANRIKI=万力というタイトルには「日本の常識を万力で壊したい」という想いが込められているような気がしてきました。

後づけですが、ぜひそういうことにしてください。本当にそう思っています。今後はいまの言葉をタイトルの由来として使わせてもらうかもしれません(笑)。

――プロデューサーである齊藤さんをはじめ、クリエイターのみなさんが現代社会から同調圧力を感じていることの裏返しのようにも思います。

そうですね。TVドラマでも映画でも、「今回はこういうテーマで、こういう構成のものになります」と、それこそグラフ化された資料を読み上げるかのように企画が提案されることが多いように感じるんです。もっと違った素材と調理方法で、誰も食べたことのないような料理を作ってもいいはずなんです。今回の『MANRIKI』は3つのフェーズで構成されていますが、どれもまったくルックの異なるものになっています。観る人によって、いろんな捉え方ができるはずです。従来の文法的なものはぶっ壊して、映画的な自由度を大切にしています。いまはYouTubeとかSNSとか、いろんな情報が溢れている中で、映画を選択してもらわなくてはいけない。ほかにはない発想のもので、コクのあるものを用意していかないと誰にも観てもらえなくなってしまう。日本だけでなく、世界的にもそうなってきています。いまある映画界の主流ではない亜流の流れの中に、いろんな要素を注ぎ込むことで新しい流れができないかなと考えているんです。