May 16, 2019 interview

常識に囚われると真実は見えてこない――脚本家・古沢良太が『コンフィデンスマンJP』に仕掛けたもの

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目に見えるものが真実とは限らない、コンフィデンスマンの世界へようこそ――。そんな前口上と共に始まった『コンフィデンスマンJP』(18年/フジテレビ系)。ダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)ら腕利きのコンフィデンスマン(詐欺師)たちが仕掛けるトラップは毎回話題を呼び、5月17日(金)から公開される劇場版『コンフィデンスマンJP』では海外へと活躍の場を広げる。テレビシリーズに続いて脚本を手掛けた古沢良太が、本作に隠されたメッセージ、独自の人間観、そして大きな影響を受けたアノ作品について語った。

長澤まさみが愛される詐欺師に

――コンゲーム(信用詐欺)を題材にしたテレビシリーズ『コンフィデンスマンJP』は、ダー子たちが毎回異なる業界でどんなトラップを仕掛けるのかが楽しみでした。さまざまな職業についてリサーチして、10本の脚本にするのは大変な作業だったと思います。

毎回違った趣向の脚本を10本用意するのは大変でしたね。それぞれの職業について、懸命に調べ上げたつもりはないんですが、まぁそれなりには調べました。キャラクターを紹介する上で、ダー子は“天才詐欺師”と便宜上呼ばれていますが、実は彼女は努力の人だと僕は思います。相手を騙すために、大変な研究を重ねているんです(笑)。

――テレビシリーズのダー子は「ハニートラップだけは苦手」という設定でした。今回の映画版では、テレビでは描かれなかったダー子の意外な一面が明かされることになりますね。

どこまでが真実なのかは、映画をご覧になった方たちの間でも諸説が飛び交うことになるかと思います(笑)。まぁ、コンゲームものの映画に登場する女詐欺師は、だいたいハニートラップを仕掛けてくるんです。すごい美女が色仕掛けで、男を落としてしまう。ハニートラップは万能で、どんな状況でも使えてしまうんです。なので、テレビシリーズでは禁じ手にしました。長澤まさみさんは何でもできちゃう人だから、逆にハニートラップだけは苦手……という設定にしたほうが、視聴者から愛されるんじゃないかと思ったんです。もし、ダー子役が長澤さんじゃなかったら、もっとステロタイプな女詐欺師になっていたかもしれません。

――あえて禁じ手を設けることで、物語が面白くなるわけですね。

そうですね。でも、長澤さんに初めてお会いした時に「アフロを被りたい」と言われたんです。最初に言うことがそれかよと思いました(笑)。

――長澤まさみさんがアフロを被る=何でもやります宣言じゃないですか。

えぇ、それで「わかりました、被せましょう」と(笑)。それもあって、第6話「古代遺跡編」ではアフロヘアを被ってもらったんです。どうすれば長澤さんの魅力を引き出せるかをいろいろ考えたことで、ダー子は非常に多面的な顔を持つキャラクターになったように思います。そんなダー子を、長澤さんもすごく楽しんで演じてくれたみたいです。