May 16, 2019 interview

常識に囚われると真実は見えてこない――脚本家・古沢良太が『コンフィデンスマンJP』に仕掛けたもの

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予測されていた五十嵐のブレイク

――長澤さん、東出さん、小日向さんの3人は、ダー子、ボクちゃん、リチャードたちの付かず離れずの関係性をすごく楽しそうに演じていた印象があります。

それはあるでしょうね。『コンフィデンスマンJP』の脚本は撮影より先行して進めていたんです。基本的に僕はキャストのことはあまり意識せずに、自分の頭の中にいるキャラクターたちをちゃんと動かすことを心掛けながら脚本を書くようにしているんです。でも、今回はあまりに魅力的なキャストばかりだったので、だんだんと僕の頭の中のキャラクターたちも侵蝕されていったようです。それでドラマが面白くなるのなら、僕としてもOKなんです(笑)。

ダー子は長澤さんが演じたことで、よりハチャメチャで無軌道なキャラになったと思います。リチャードも最初はダー子とボクちゃんが揉めているのを「まぁまぁ」となだめるポジションのつもりだったんですが、小日向さんが演じるリチャードを観ているうちに、次第にダー子と一緒にふざけるお茶目なキャラに変わりましたね。東出さんは僕が考えていた以上にボクちゃん役に味を出してくれました。東出さんは一見すると爽やかな好青年ですが、話してみると博学だし、自分の気持ちを的確に言葉にすることができる人なんです。頭のいい人。ボクちゃんは純朴な好青年に見えるけど、実は切れ者の詐欺師……という二面性に説得力を与えてくれたのは、東出さん自身が持っている素養じゃないかなと思いますね。

――テレビシリーズで培われた関係性があっての映画版だと言えそうですね。

そうですね。長澤さん、東出さん、小日向さんに加え、五十嵐役の小手伸也さんを加えた4人はとても仲がいいんです。劇中の3人、いや4人の関係性は、実際に演じている彼らが生み出してくれたものだと思います。もちろん、彼らの間で試行錯誤はあったでしょうが、本人たちの関係性がドラマに反映されている部分はかなりあるでしょうね。

――ダー子LOVEの五十嵐は第2話からの登場。コメディリリーフとしてすっかり定着しましたが、ここまで人気に火が点くと予測していました?

五十嵐は人気が出るだろうなぁ、小手さんも売れるだろうなぁと思っていました。でも、最近の小手さんは忙しすぎるみたいですね。こっちをないがしろにされると、哀しいですよ(笑)。

――他局のドラマに小手さんが出ていると、「あっ、五十嵐だ!」とつい思ってしまう。五十嵐が別の業界に潜入しているかのような錯覚を覚えてしまいます。

いっそ、芸名を五十嵐に改めたほうがいいんじゃないかと思います。僕的には普段の小手伸也も、五十嵐が演じているんだと思っているんです。小手さん本人も、そういう意識でいてほしいですね(笑)。