――一番印象に残っている話は何ですか。
自分からは絶対に出てこなかったイメージで言うと「その女の子はいつもニコニコ笑っていて、大人のちょっと陰に隠れてしまうような、初めて会った人に対して照れてしまうような小学生ぐらいの女の子みたいな印象が強いですね」とお話されたことです。それは自分だけでは思いつかないイメージで、あの言葉は演じるうえでヒントになったと思います。
――河合さんがご出演されている『ナミビアの砂漠』(2024)はカンヌ国際映画祭に出品されます。河合さんにとって本作と共にこの出来事が重なる今年は人生の転機になるのではないかと勝手に思っています。現時点でこの俳優という仕事に対して、どのような考え方を持っていますか。
入江悠監督の『あんのこと』と山中瑶子監督の『ナミビアの砂漠』が同じ年に公開されることは凄く恵まれていることです。「いつも一生懸命に演じているだけです」と言いつつも、最初の頃に知り合いになった子達(俳優仲間)の中には辞めていく子達も居るんです。そう思うとデビュー5年でここまで作品に恵まれているということは凄く幸せだし、特別だし、感謝すべきことだということを自覚していないといけないと思いました。海外の映画祭に行けることもそうですが、反響がある時に世の中に届いているという自覚を持って“続けていきたい”といつも思っています。
忙しくても気になる映画は映画館で観ている河合優実さん。最近は濱口竜介監督の『悪は存在しない』(2023)を映画館で観たそうで、ラストの解釈について気になって仕方がない、と映画の素晴らしさを讃えていました。このインタビューはカンヌ映画祭に行く前のこと。果たして『ナミビアの砂漠』(2024)チームと体験したカンヌは彼女にどんな刺激を与えたのか。それも気になりつつ、今年のベスト映画のひとつに名を残すであろう『あんのこと』で益々、彼女の演技に注目があつまると確信します。
スタイリスト: 杉本学子
ヘアメイク:秋鹿裕子
機能不全の家庭に生まれ、虐待の末にドラッグに溺れる少女が、人情味あふれる型破りな刑事や、更生施設を取材する週刊誌記者をはじめとした人々と出会い、その見返りを求めない姿に次第に心を開き、生きる希望を見いだしていく。しかし、微かな希望をつかみかけた矢先、どうしようもない現実が彼女の運命を残酷に襲う‥‥。2020年6月に新聞に掲載された「ある1人の少女の壮絶な人生を綴った記事」に着想を得て描く、実話を基にした人間ドラマ。
監督・脚本:入江悠
出演:河合優実、佐藤二朗、稲垣吾郎、河井青葉、広岡由里子、早見あかり
配給:キノフィルムズ
© 2023『あんのこと』製作委員会
2024年6月7日(金) 新宿武蔵野館ほか全国公開
公式サイト annokoto