―― 尚玄さんは監督など映画を撮る方に興味はないのですか。
機会があればと思いますけど‥‥。若い頃から機会があればとは思っていましたが、やはり色々な凄い才能の人たちと出会ってしまっているので恐れ多いと思ってしまいます。
―― 以前、本が凄く好きな女優さんに「本を書いてみたらどうですか」と言ったことがあります。そうしたら彼女は「いい小説を読み過ぎて恐れ多い」と言ったんです。
同じですね(笑)。
―― でも、昨日会ったある監督は「人によって好みも評価も違うから、いいものなんてない」と言ったんです。その言葉を聞いて目からうろこでした。
確かに。
―― 今後、どんな作品に出演したいと思われていますか。
今まで通り一つ一つ大切に、挑戦的な作品を真摯にやっていくだけです。今は私生活とのバランスもいいので、そんなに忙しくなっても困るし(笑)。子どもも生まれて父親にもなったので、今回の作品も、出演した『赦し』(2023)などでも、今までは想像で父親という役を演じていましたが、今後は父親という役に対しても変わっていくと思います。そんな風に変わっていくのが楽しみです。
それに先ほども話しました、僕らが新しく立ち上げた「Cinema at Sea – 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル」が立ち上がるのも面白いと思っています。今回の映画祭の中には企画ピッチングもあるんです。今年も環太平洋の国々から素晴らしい企画が集まりました。これからこの映画祭が映画を通した新たな文化交流の場となるよう僕も尽力していきたいと思っています。
日頃から映画愛に溢れ、新人監督作品や海外の監督作品など様々なミニシアター作品に出演している尚玄さん。映画祭や映画館にも頻繁に足を運ぶご本人に、作品選びや作品との関わり方について聞きたいと思っていたことから今回、インタビューに答えてくださいました。しかもご自身の口から第一子誕生を聞いて嬉しくなった今回の取材。話が尽きなく、時間が足りなさ過ぎて、また今度インタビューを頼もうと思った実りある時間でした。
ヘアメイク:藤原玲子
生まれて間もなく視力を失った10歳の少年・光(ヒカリ)。光にとって世界は「音」であり、彼はカセットテープに自分の世界を録音してゆく。光の眼は手術をすれば視力を得られる可能性があった。母の説得により、手術を受けることを決意するが。20歳になった光は、東松照明(1930-2012)の写真に強く導かれるように長崎へ。旅先で出会った自称革命家の男・友部にドキュメンタリー映画製作に誘われ、長崎・沖縄の戦争の痕跡を辿ることになる。その中で、心に傷を負いつつもたくましく生きる女・詠美、沖縄を愛し家族を愛する男・糸洲と出会う。戦争の痛ましい記憶と彼ら3人の生き様は、光の人生を大きく揺さぶり始める。灼熱の日々の中、光の眼に映るものとは、何か?そして、51年後の2070年、71歳になった光(加藤雅也)。彼の生きる世界は大きく変容していた。
監督・原案・脚本:半野喜弘
出演:眞栄田郷敦、池内博之、Awich、尚玄、伊藤正之、加藤雅也
配給:ギグリーボックス
©2022 彼方の閃光 製作パートナーズ
12月8日から全国順次公開
公式サイト kanatanosenko