Dec 08, 2023 interview

尚玄インタビュー 平和は当たり前ではないということを感じてほしい『彼方の閃光』

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―― 楽しい事しか見たくないというのは、良くないことですよね。半野監督ご自身もこれからの未来に不安を感じて、この映画を作られたのかも?とも思いました。

映画には【友部】と【光】が居て、僕の演じる【糸洲】という役は本当にシンプルで学はないので思想には左右されない人間、彼は自分の愛する家族、特に息子と生きる為に生きているんです。やはり沖縄の基地問題、辺野古の問題には感情論もありますが、皆食べていかないといけないんです。色々な想いがあって色々な意見がある。そんな中で【糸洲】の考えは「生きないといけない」「戦争はよくないもの。人を殺すということはいいことではない」というシンプルなものです。これは人間として純朴な意見なんです。皆が普通に持っているはずの感覚です。その感覚に余計なものがつくことによって人は変わってしまう。【糸洲】の言葉は、変わらないからこそ強いのだと思います。

―― 本作は、状況や関係を説明するようなシーンも台詞もなく、画の力を信じている作品でした。だからこそ登場人物の喋り方や行動から読み取る面白さもありました。

そうですね。実は辺野古のシーンで、台本では【糸洲】は【友部】の「胸ぐらを掴む」と書いてあったんです。当日、僕は監督に「【友部】の胸ぐらを掴まなくていいですか」と聞いたんです。

―― そうだったんですか!もし、あそこで胸ぐらを掴んでいたら【糸洲】の印象が変わっていました。

僕の台詞で「暴力では解決しない」という台詞があります。脚本を読んだとき、【友部】に対して言っている【糸洲】のあのことばは、実は【光】に対しても言っていると僕は感じたんです。若くて柔軟なこれからの未来を背負っている【光】に対して響いてくれればいい、想いが届いて欲しいと思って話している。そういう意味も込めて胸ぐらを掴むという行動をしない形を選びました。

―― 私は “演じることに対して、色々な考え方があっていい”と思っています。例えば「監督のリクエスト通りに演じる」と答える俳優さんもいれば、「海外の監督にどんなことが出来るか?と聞かれたからそこから演じることに対する考え方が変わった」と話される俳優さんもいらっしゃいました。私自身は“役に対して監督に意見を述べる、ディスカッションすることは、作品にとっていいことなのではないか”という思いもあります。尚玄さんはどのように思われますか。

海外の監督は、必ずコミュニケーションをとります。でも日本だとコミュニケーションを取る時間が圧倒的に少ない印象です。全体を通して俯瞰で見ている監督に対して、俳優は演じる役のことを常に深く考えている。ですから僕は自分の演じるキャラクターに関しては、監督よりも知っているべきだと思っています。俳優は人物像を深めていくのが仕事ですから、逆に自分から監督に「どう思う?」というやり取りをしてもいいと考えています。日本ではディスカッションというスタイルが映画の世界だけでなく、全ての分野において“少し弱いのかも?”と感じています。

   

―― 確かに意見を述べると、煙たがられることがどこのシチュエーションでもありますよね。

若い頃、ある監督に色々なアイディアを提案した時に監督から「迷わなくいいから」と言われたんです。僕は色々なパターンを提案しただけで、全然迷ってないんですよ(笑)。監督が全体を見た時に“どっちが好きかな?”と思って色々と聞きたかったので、この時はちょっと驚きました。

―― 映画に出演することが出来ずに悩む若者からの相談を受けることがあります。尚玄さんならどんなアドバイスをされますか。

本当に若い俳優が、映画に出演するのは大変だと思うんです。だけど「映画に出たい」と言いながら、映画館に行かない若い人が結構居ると思っています。チャンスがあるかはわかりませんが、とりあえず東京には監督さんやプロデューサーが立つトークショー付きの上映が沢山あるので、そこに足を運んで欲しいです。そこに行けば監督やプロデューサーがどのように映画を作ったか学べるし、知り合いになれるかもしれない、その可能性だってあるんです。その出会いを掴むのは自分だと思うので行動して欲しいです。僕らの若い頃はこんなにも沢山の映画もイベントもありませんでしたし、映画に出演できるということだけでも、凄く重要で難しいことでしたからね。あと最近はスマホで簡単に映像も撮れるので、仲間内でアイディアを出し合って作品を作ることもとてもいいことだと思います。とにかく行動することです。