―― 最近、ボクシングを題材にした映画が多く作られているように感じています。ボクシング映画は男同士の戦いのものが多く男性の映画だと思われがちですが、そこには人間ドラマが描かれているので性別は関係ないと思うんです。ボクシング映画でもある本作の魅力はどんなところにあると思いますか。
「痛い」とか思って、ボクシング映画を嫌がる人も多いと思うんですよ。でもね、ボクシング映画の魅力には、もちろんボクシングシーンでの熱気もあります。役者たちは本当に熱い戦いを見せてくれてますから。
それに僕が演じる【広岡仁一】が(横浜)流星演じる【黒木翔吾】に人生を教えるだけではないんです。【広岡仁一】自身も【黒木翔吾】から何かを思い出させてくれる、教えてもらえるんですよ。彼を見る事で自分の人生にやっと一区切りをつけることが出来る。そんな男たちを見ている女性たちの姿もしっかり描かれています。
もう一つ言いたいのは「失くした瞬間に得られるものがある」ということ。何かを落とした時には、絶対にそれ以外の何かを拾っているんです。そういうことを忘れないで欲しい。負けたことばかり、失くしたもののことばかりを皆は気にするけれどそうではない。
例えば、受験でもそうですが落ちた事ばかりを気にする、でも「落ちた」ということを得ているんです。そのことを自分がその後の人生でどのように活かすか?が大事であると映画から感じるはずです。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、【黒木翔吾】は試合に出場したことであるものを失います。でも彼はその後の人生で何と戦ってもノックアウトされない自分を得たんです。言葉で表現されることはなくても映画を観ている人は、その想いをお土産にして帰れる映画だと思います。
―― 本作ではミット打ちで、横浜流星さんのパンチを受けています。若い役者さんとの共演で刺激など得たものはありますか。
流星にしても【中西利男】を演じる窪田(正孝)にしても、映画だから演じているし、試合の流れもわかっているんだけど、2人から「負けたくない」という気持ちがリング場からほとばしってくるんです。【大塚俊】を演じる坂東(龍汰)もそうでした。試合の結果はわかっているけど、だけど負けたくない。彼らの中には“ボクシングをどれだけ自分の方がやっているか”を映画を観る人たちに見せたいんですよ。その勝負事がありました。そんな彼らの姿を見て“役者同士っていいな”と思っていました(笑)。