Jan 12, 2023 interview

前野朋哉インタビュー 最初の一言を発するのにちょっと勇気が必要だった『ひみつのなっちゃん。』

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名優・滝藤賢一がドラァグクイーンを演じることでも話題となった『ひみつのなっちゃん。』。本作は初監督を務める田中和次朗監督による完全オリジナル脚本であり、ドラァグクイーンのなっちゃんが急死したことで、なっちゃんのお葬式に行くことになった3人のドラァグクイーンによる笑いと涙のロードムービー。主人公【バージン】を演じる滝藤賢一と旅するクイーンの【モリリン】には渡部秀、更にテレビでも活躍する人気クイーン【ズブ子】役に前野朋哉、他にも亡くなった【なっちゃん】役にカンニング竹山と異色の顔合わせが実現。

新宿2丁目から岐阜県郡上市へと旅する3人の珍道中は、人との交流を通して温かな涙を流す自分探しの物語でもあるのです。今回は、本作でひときわ感情表現が豊かだった【ズブ子】を、茶目っ気たっぷりに演じた前野朋哉さんにお話を伺いました。

前野朋哉インタビュー 最初の一言を発するのにちょっと勇気が必要だった『ひみつのなっちゃん。』
前野朋哉インタビュー 最初の一言を発するのにちょっと勇気が必要だった『ひみつのなっちゃん。』

―― ドラァグクイーンを演じることになって最初の本読みはいかがでしたか。

最初に【バージン】役の滝藤(賢一)さんと【モリリン】役の渡部(秀)くんと僕の3人で本読みをしたのですが、その時に2人が“どういう感じで来るのか?”実は凄くドキドキしていました。ドラァグクイーンは今まで演じたことがない役でしたから、とりあえず自分が台本を読んで思ったように演じてみたんです。一つわかりやすい【ズブ子】のパーソナルな部分で、彼女は恋愛中でして、そこに関する感情はしっかり出したいと思っていました。

緊張しましたけど、この日に滝藤さんと渡部さんと台詞を合わせたことで“自分はこれでいいんだ”と手がかりを見つけられた気がします。ただ、声のテンションとかも含めて不安はあったので、最初の一言を発するのにちょっと勇気が必要だったことは覚えています。でも一度声に出してしまえば後は気が楽になりました。

―― 前野さんが演じられた【ズブ子】は、皮肉屋だけど感情に素直で、凄く可愛かったです。

実は台詞が終わった後でも滝藤さんと渡部くんとアドリブで喋っていることがありました。車の中でのシーンの後に3人で下ネタを交えつつワイワイやっているのですが、カットされてしまいました(笑)。けれど、こうゆうフリーな会話の時間も【ズブ子】として大切だった気がします。【ズブ子】は起伏が激しく、感情もわかりやすい人です。友達いたら楽しいと思います。ただ、自分の感情に素直すぎて、トラブルメーカーになりがちなので、旅には一緒に行きたくないです。

―― 渡部さん演じる【モリリン】と【ズブ子】が2人でしっかりとメイクをし衣装を着て踊るシーンもありましたね。

緊張しましたね(笑)。渡部くんと2人で練習しました。実はあのシーンではピンヒールを履いて踊る予定だったんです。だから普段ヒールを履くことがないので、撮影前までにヒールに慣れておこうと思って、夜、家の近くでヒールを履いて散歩したりもしました(笑)。それがすごく難しくって、さすがに“これで踊れている人は凄い。自分には無理だ”と思い、実は衣装さんにお願いしてヒールの高さを下げてもらったんです。

本当は最初の高さで踊れたら良かったのですが、こればかりは難しかったです。それと、踊りの途中で羽織を脱いだりもするのですが、どうやったら綺麗に脱げるのか、先生と渡部くんと3人で研究して作っていった感じです。

前野朋哉インタビュー 最初の一言を発するのにちょっと勇気が必要だった『ひみつのなっちゃん。』

―― 映画にはドラァグクイーンで歌手、ライターとマルチに活動しているエスムラルダさんが監修に入っていますね。

そうなんです。だからエスムラルダさんに色々とお聞きしました。ただ生でショーを観たりすることは出来なかったのですが、動画を見させて頂いてショーの世界観を知ることが出来ました。

基本的にはショーなので踊って華やかに魅せることが大切なんですが、【スブ子】はコメディ担当なので、振付のYuiさんが踊りの中にコメディ要素をどんどん入れて下さったんです。渡部くんと同じ踊りではあるのですが、僕の踊りはちょっとニュアンスが違うんです。そこの部分はショーを作っていくうえで面白かった要素です。ドラァグクイーンのダンスはそれこそエンターテインメントなんです、すごく奥が深い世界ですね。

―― 映画の中では、秘めたる思いや複雑な気持ちについて描かれています。役を通してそういう感情に触れてどう思われましたか。

作品の中にもある描写で滝藤さん演じる【バージン】がサービスエリアでお化粧直しをしている時、そこに居た観光客に悪口を言われるというシーンがあります。だけど実際は自分の悪口を言っていたのではなく、別の人の悪口を言っていたんです。そこは【バージン】さんの勘違いだったわけです。つまりそういうことなのではないかと‥‥。

コンプレックス、社会的な立ち位置、秘密も、自分の捉え方次第で大きく変わってくる。他者は意外に何も思っていなかったりします。今まで世の中が暗く見えていたのが、誰かの一言、美しい景色を見ること、人の想いに触れることなどで、一気に明るくなることだってありえる。全部の感情はラストの郡上踊りを見る【バージン】さんの表情に繋がっていくと思います。

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