―― DREAMS COME TRUEの曲を初めて聞いたのは青春時代で、親になってMVを観た時に、お二人がMASADOとMIWASCOというアバターにもなっていて、子ども達が視覚でも楽しめる世界観に変わっていました。どのような意識の変化があったのですか。
30年も経つと僕は60歳を超えているし、吉田も50代だからそういう意味では20代の時のようなフィジカルな活動というか、どうしてもキャリア的に活動がゆるやかになるのがアーティストなんです。ローリングストーンズを見ていてもわかると思うけど(笑)。
そんな中で色々なことがもの凄いスピードで動く時代に、平成でやっていたような活動スタイルでは通じない。ましてや今の中心はYouTubeやボカロPが作っている現場だから、その中で我々はどうするか?というところでフィジカルなドリカムを生きながらえさせようとするのではなく、逆に僕がずっと前から始めているドリカムとドリカムの楽曲を引き離して、楽曲は楽曲として届けたいと思いました。「もう疲れたからプロモーションしたくない」みたいなフィジカルに縛られるのではなく、「それならヴァーチャルドリカムにやらせよう」みたいな発想だったんです。肉体を持つ我々ドリカムから引き離して、楽曲は現役でいて欲しかったんです。
―― それが結果的に子ども達にも興味を引くものへとなったんですね。
そうですね。そのおかげて実際に『ソニック』の映像と僕らが一緒にライヴが出来たり、香川照之さんがプロデュースしている昆虫アニメ『インセクトランド』の世界と僕らが同じアニメの世界でやり取りが出来るということが叶う(主題歌「羽を持つ恋人」も書き下ろし)。それにVTuber Fes Japan 2021に出演出来たりもしたし。吉田に「VTuber Fesに出ようよ」と言っても難しいと思うけど「アバターならいいよ」と言う(笑)。
今、リアクションはそんなに期待したほどではないけれども、とはいえ、0が1に確実になっている。我々のような長いキャリアを持つバンドにとっては、それをやらないと1が生まれなかったのであえて諦めないでやっていきたいと思っています。
―― 中村さんは、常に時代の最先端を走り続けていらっしゃいますが、どうやって発想が生まれるんですか。
その都度その都度です。フィジカルな僕たちに引っぱられて、僕たちの楽曲が死んで欲しくないんです。ある程度のキャリアを積んで、我々の絶頂期というものがあったとして、それから落ちた時に“我々と共に我々の歌が死んでしまうのは嫌だ”とそのことを凄く考え始めました。
あの吉田の詩はカルチャー的には、電話や留守番電話のような切なさはなくなってしまったけれども、何千年経っても人を想う気持ち、仲間を想う気持ち、自然を想う気持ちは永遠だと思うんです。何故、今、我々が万葉集を読むのか?というとその人間が持つ普遍なものを歌っているからです。カルチャーも言葉自体も変わっていますが、あと何千年経っても吉田が作り、生み出してきた真実は絶対に変わらないし、普遍だし、必ず人間の役に立つ為の言葉の集まりなんです。だから吉田の言葉を詩集にしたりもしています。そして、もう一つの方法としてアバターがあります。
今後どうなるかわかりませんが、中国で書というものが武器よりも力を持っていた時代もありました。言葉や文字そのものが力を持つ時代がやって来た時に、言葉や詩は何よりも強いものです。文字だけが残った時に吉田の詩は必ず誰かの為に役に立つと思っています。
―― 映画の台詞で素晴らしいものがあるのと同じように歌もそうですね。今回の『ソニック・ザ・ムービー/ソニックVSナックルズ』もそうですが、DREAMS COME TRUEの日本版主題歌「UP ON THE GREEN HILL from Sonic the Hedgehog Green Hill Zone – MASADO and MIWASCO Version -」を☆Taku Takahashi(m-flo, block.fm)さんがサンプリングしたトラックに、SKY-HIさんがラップを乗せ、「Fly Without Wings」というオフィシャルインスパイアーソングが生み出されました。このような後輩たちの活動をどう思われていますか。
僕たちが60年代70年代の音楽を元にJ-POPというものを作り始めたので、それとまったく同じ流れだと思います。昔は曲をコピーして何のマシーンも使わずに自分なりの作曲やアレンジをして出すという作業がありました。今の時代は少し違って、サンプリングというものが出来たことで、昔はコピー=サンプリングに90%の力を使っていたのが、サンプリングがあることによってサンプリングを選んだ後は、あとの90%は新しいクリエーションになるんです。
それはそれでもの凄く楽しいし、元ネタになった僕たちは凄く幸せじゃないかな。元ネタにならないと始まらないから、ブルーノ・マーズとかもそうでしょ。元がサンプリングされたことによって多くの人に知られて、また回るわけです。これからは、ネタにならないような音楽を作っては駄目なんです。
―― まさに音楽の世界観が広がっていくんですね。
そう、どんどん広がっていくし、SKY-HIがやったことを誰かがサンプリングするかもしれない。それが音楽だから、サンプリングのネタになるということはとても嬉しいです。様々なアーティストたちがアレンジしたトリビュートアルバム「Sonic the Hedgehog Tribute」の音楽も素晴らしいので、期待していてください。
好きな作品の主題歌はもちろん、司会として関わった多くの映画主題歌を担当されているDREAMS COME TRUE。『ソニック・ザ・ムービー/ソニックVSナックルズ』では日本版主題歌「UP ON THE GREEN HILL from Sonic the Hedgehog Green Hill Zone– MASADO and MIWASCO Version -」と、エンディングソング「次のせ〜の!で – ON THE GREEN HILL – MASADO & MIWASCO VERSION」の2曲を映画館で堪能出来ます。更に、中村正人さんが吹き替えに挑戦しているんですが、そのシーンがまた抜群に面白い!なんとソニックとダンスバトルを繰り広げるコサックダンスの達人“チャンプ”を演じているのです。しかも強面なのに実はチャーミングなキャラクター。そちらもお見逃しなく!
文 / 伊藤さとり
写真 / 奥野和彦
平穏な生活が戻ったグリーンヒルズで夜ごと勝手に街を守り続けているソニックの願いはただひとつ―「本当のヒーローになりたい!」。そんな折、再び世界に暗雲が立ち込める。ドクター・ロボトニックが銀河系で最も危険な戦士ナックルズを引き連れて帰ってきたのだった。彼らは、史上最強の破壊力を持つ武器【マスターエメラルド】の在処を探しており、なぜかソニックを執拗に狙うのだった。自慢のスピードで立ち向かうソニックだが、ナックルズの圧倒的パワーでねじ伏せられ、まるで歯が立たない。間一髪のところで味方のテイルスに救出されたソニックは、悪の手に落ちる前にマスターエメラルドを探す旅に出ることを決意する。 ソニック史上最大の危機を前に、世界の未来がソニックとテイルスに託された!
監督:ジェフ・ファウラー
出演:ジェームズ・マースデン、ベン・シュワルツ、ティカ・サンプター、ナターシャ・ロスウェル、アダム・パリー、シェマー・ムーア、コリーン・オショーネシー withイドリス・エルバ and ジム・キャリー
日本語吹替版:中川大志、山寺宏一 ほか
配給:東和ピクチャーズ
© PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC.
2022年8月19日(金) 全国公開
公式サイト sonic-movie.jp