Jun 02, 2022 interview

恒松祐里インタビュー 主演ならではの新しいチャレンジも感じた『きさらぎ駅』

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インターネット匿名掲示板に投稿された都市伝説を映画化した『きさらぎ駅』。ネットで現代版「神隠し」として都市伝説になっている異世界駅を大学の卒業論文にしようとした女子大生・堤春奈が体験するサバイバルホラーです。

映画初主演を務めるのは『凪待ち』でおおさかシネマフェスティバル2020新人女優賞受賞ほか、『タイトル、拒絶』でも存在感を放った女優、恒松祐里。メガホンを取るのは、コロナ禍によるリモート撮影の中、アイデアを駆使した『真・鮫島事件』が話題となった永江二朗監督。本作では観客が登場人物の視点で恐怖を体感する撮影に挑みました。

今回は、主演の恒松祐里さんに初主演作での思い出や演技に対する思い、更に今の自分についてお話を伺います。

―― 今作『きさらぎ駅』では、観客が登場人物と一緒に物語の中にいるような視点で映画を体感出来る手法を使っているのも新鮮でしたが、恒松さんにとって挑戦だったことはなんでしょうか。

撮影方法がまさに挑戦だったと思います。FPS(ファーストパーソン・シューター:一人称視点)もそうですが、私が出演するパートも監督の中には確固たるイメージ像があるんです。でも、今までにない撮影方法なので表現の仕方も新しいものが多かったんです。だからこそ、それをきちんと形にすることがチャレンジングだったと思います。

撮影期間中も私たちが出演するシーンは一発OKでないといけない、全部がかみ合わないといけない撮影方法でした。長回しの時もカメラマンさんが動いたら私たちも移動するみたいな感じで、スタッフさんたちと俳優部のお芝居のタイミングを合わせないといけない撮影でした。それが一番のチャレンジでした。 

―― 俳優部と撮影部、全スタッフの息が合っていないともう一度やり直しなのですね。

そうです。カメラが動いてから私たちが入って来た方がよりナチュラルに見えるとか、車が出るタイミングとかも色々と合わせないといけないんです。それが難しかったけれど面白かったですね。

―― 7歳でドラマ「瑠璃の島」でデビューして以来、実は映画初主演でしたが、主演として立つということで今までの撮影と気持ちの中で違いはありましたか。

現場で「主演の恒松祐里さん」と紹介されると凄く不思議な感覚になりました。いまだに「主演です」と言うことにも不思議な感覚でいます。実は“今までと変えた方がいいのか、それとも同じ方がいいのか”と凄く悩みながら現場に入ったんです。でも結局、現場に入ったらいつも通りになっていました(笑)。いつも通りに皆と接して、気負う感じもなく、皆をひっぱるわけでもなく、普通に撮影をしていました(笑)。

子どもの頃からやらせて頂いているので、やる時はちゃんとやる、しっかりしている方かなとは思うんですが、主演という立場になるとまだまだなんです。観客をひっぱる主演という立場でありながら、役の人物像を作っていけばいいのか、何が正解なのか、主演としての立ち位置がいまだによくわからないんです。これからも主演という立場で何かの作品をやらせて頂ける機会があるなら、その中で主演としてのあり方、色の付け方を覚えていきたいと思っています。

―― 共演者には、本田望結さんや莉子さんなど年下の役者さんたちともご一緒でしたが。

本田望結ちゃんは “同い年じゃないか?”と思うくらい本当にしっかりされていて、年下とか関係ない感じでした(笑)。莉子ちゃんも凄くしっかりされてますし、皆さんしっかりされている方ばかりでした。だから心配する種もなく、安全に皆で撮影することが出来たんだと思います。

―― 恒松さんはずっとエンターテイメントの世界で仕事をされていますが、これまでも葛藤などあったのではないですか。

葛藤はどの仕事でもあると思いますが、学生の頃などは「この仕事をやり続けるべきなのか」という葛藤がありましたし、今は作品と自分の思う役に対する表現の仕方の違いなどで葛藤が生まれたりもしています。でもその葛藤を乗り越えていくことで自分の経験が増えていく気もしているので、それも含めて楽しいです。

今年の夏に舞台をするのですが、初めてのストレートプレイなんです。これまでやったことがないものは沢山ありますし、まだまだ学びたいこともたくさんあります。今は色々なことを吸収している途中なので、凄く楽しいですね。

―― 佐藤江梨子さんとはじっくりと対話するシーンが印象的でしたが、共演していかがでしたか。

佐藤さんは素晴らしい女性です。佐藤さんは役に入っていないカメラが回っていない時も凄く面白くて、お話している言葉のセンスも内容も面白いんです。お子さんのお話とか、世間話なのですが、選ぶ言葉のセンスが面白くて、ずっと引き込まれるように聞いていました。撮影でご一緒したのは2日間ぐらいだったのですが「もっと一緒にいたい」と思う女優さんでした。