May 05, 2022 interview

市原隼人インタビュー 子どもたちと本気で楽しんだ『劇場版 おいしい給食 卒業』

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2019年にテレビドラマからスタートし、抜群の面白さと世代を選ばすに楽しめるストーリーで話題となった「おいしい給食」。1980年代を舞台に、学校給食を愛してやまない中学教師の甘利田幸男が、用意されたメニューをアレンジし独自の食べ方を楽しむ生徒、神野ゴウ(佐藤大志)との目には見えないバトルを繰り広げつつ、「食材」への感謝も伝える給食スペクタクルコメディです。その映画版第2弾となる本作では、給食界を震撼させる出来事が勃発。更に甘利田と女性教師(土村芳)との恋!?まで描かれるドラマティックな展開に。

今回は主人公・甘利田幸男をドラマ、映画と演じ続ける市原隼人さんにお話を伺います。

―― 映画でのモノローグ(心の声)の抑揚が素晴らしかったです。

まずナレーションを録ってからそれに合わせて芝居の動きを撮影します。なのでナレーションをどう表現するか?そこに合わせてどう動くか?全て構築しないといけない現場でした。撮影場所は埼玉県で、毎日2時間近くかけて現場に通っていたのですが、現場以外でも常にこの作品のことしか考えていなかったです。夜も寝られなかったですし、綾部監督も撮影初日に声をからしてしまうほどで(笑)。僕も気負いがありました。監督の想いに精一杯応えられるかどうか?それが、やはり役者の醍醐味だと思うんです。そんな想いを現場にいる全員が持っていました。本当に素晴らしいチームで、オールスタッフ、俳優陣もいい意味で手作り感がありました。

映画は総合芸術ですのでそれぞれの部署にやりたいことがあり、すれ違ったりすることもある組がありますが『おいしい給食』に関しては完全な全員野球。本当に愛で包まれていて、生徒たちの最後のシーンのあと「一生懸命頑張りましたね、本当にありがとう」と生徒役の子ども達1人1人に僕から【卒業証書】を渡しました。受け取った生徒達はみんな号泣していました。僕はまだ撮影シーンが残っていたので、そんな彼らの姿を見ながら涙をこらえていました。皆さんが本当に一生懸命に作品に向かって戦ってくれたのが凄く嬉しかったです。

―― アフレコで録った声を聞きながら演技をしていたから表情が見事にマッチしていたんですね。

まず段取りをして、その後にアフレコを録ります。録ったら、すぐその場で録音したアフレコをかけながら芝居をしています(笑)。その為にまず自宅でアフレコを構築しないといけないんです。ダイブするのも、宿敵である【神野ゴウ】に対するリアクションも台本には全く書かれていないので“どうしよう、どうしよう”と悩みながら構築していく感じでした(笑)。

―― 今までに同じような経験をされたことはありますか。

ないです(笑)。

―― 一緒に完全に作っている感じですね。

その過程が有り難く貴重なものでした。任されている、必要とされていると思える瞬間を頂けたのも名誉な事ですし。何よりゼロから作ってきた完全オリジナル、それをお客様に観て頂ける事が楽しみです。2019年10月から放送されたドラマ版シーズン1は、放送局がキー局じゃなかったのもあるかもしれませんが、最初は取材媒体も少なかったんです。でもドラマが放送されたら何倍にも取材媒体が増えて(笑)。色々な方に楽しんで頂けていると分かりました。これは役者の醍醐味です。

「おいしい給食」ファンの知人のお子さんが、学校へ行けなくなってしまったと聞いて、【給食マニアの中学校教師・甘利田】としてその子へ手紙を書いたのですが、「学校に行けるようになりました」という返事を頂きました。その手紙を読んだ時、涙が出て来て「この為に役者というものがあるんだ」と強く思いました。言葉にならないほど嬉しかったです。

綾部監督とも「どんな人でも見られるものを作りたい。だからと言って芯が無いものにはしたくない。あまりにも暴力的な表現とか、目を背けたくなるようなものは全部避けましょう。ポップで力強くて、子どもも大人も、親子でも、どんな人とでも一緒に観られる作品。その中には知識や教養なども含まれていながらもコメディ作品としてしっかりと成立しているものにしていきましょう」と話していました。