Mar 31, 2022 interview

河合優実インタビュー 役を違う次元に変え、アイデンティティを模索した『女子高生に殺されたい』

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―― 河合さんも少し前までは女子高生ですよね(笑)。

だったはずですが(笑)。自分でも高校生の時からそんなに時間は経っていないし、そこからお芝居を始めたのですが、過去の自分は別人のような気がしています。

―― どんなところが変わったのですか。

やっぱり、このお仕事を始める前と後では全然違います。高校時代からダンスもやっていたし歌も好きでしたし、ステージで人に見せることが好きな子がとっても多かったので、皆で何かを発表する機会が多かったんです。だからなんとなくジワジワと自分が作ったものをお客さんに見せることはこれ以上ないほど楽しいなとは思っていたんですが、やはり言ってしまえばどこまで行っても遊びだったので。

こういうことでご飯を食べていけるという夢にも思わなかったことが、今ずっと続いて起きているみたいな感じなんです。相変わらず凄く楽しいですけど、プロとして続けていく中で、その楽しさの種類や形が非常に大きく変わっていくので、そういう意味で、振り返ってみると過去の自分との隔たりを感じます。この変化が成長だといいと思っています。

―― 高校の時に憧れた役者さんは居ますか。

実はあんまり作らないようにはしているんです。というのも役者さんって自分が進んで来た道によって当たり前に違うし、こうなりたいと思っても絶対なれないじゃないですか。だから特に居ませんと最近は言ってます(笑)。

―― 例えばその頃、影響を受けた作品だとなんですか。

お仕事を始めて、役者を意識し始めた高校生の時に出会った作品で衝撃を受けたものは何作品かあります。今観てもやっぱり好きなんだなと思うのが『愛のむきだし』(公開:2009年)と『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000年)、あと『ラ・ラ・ランド』(2017年)もめちゃめちゃ大好きです。それぞれが持ってるのって全然種類の違うエネルギーだけど、共通してその総量がすごい感じがします。

特に『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は最初に観た時に呼吸が出来なくなるほど泣き過ぎて、去年、(2021年:4Kデジタルリマスター版でリバイバル上映)映画館でまたやると聞いて観に行きました。2回目でもめちゃめちゃくらいましたね。ビョークは人間離れしていて妖精みたいですよね。色々総じて奇跡的な映画です。

―― 歌とダンスで表現される映画がお好きなんですね。最近、観て刺激を受けた映画はありますか。

『名付けようのない踊り』(公開:2022年)です。田中泯さんはダンスをしていらっしゃる俳優さんで、私もダンスをしていたので興味があって一回公演を観に行ったことがあるんです。ドキュメンタリー映画をやられると知って、絶対に観に行こうと思っていました。

―― 映画を観られていかがでしたか。

やっぱり唯一無二ですね。仕事をしていく中で色々な表現者を見ていますが、田中泯さんは自分が言ったこと、自分がやろうとしている道にすら縛られていない、本当に純粋な方なのだと思います。5月から放送される神尾楓珠さんと山田杏奈さん達と出演したドラマ「17才の帝国」(NHK土曜ドラマ)で最近、共演をさせて頂いたんですが、人間として想像の5倍ぐらい真っ直ぐ立っているという印象を持ちました。純粋さと哲学を持ち合わせて居て、自分に対する厳しさもあって、もの凄くカッコよくて、憧れます。

―― そんな河合優実さんは、今の時点でどんな役者になりたいと思っていますか。

世界的に、作品の形もどんどん変わって、色々な選択肢が出来ていくと思います。その中で選べる自分でいたいです。その時その時の分かれ道を自分なりにジャッジできるように常にアンテナをはって、そして選んだ道をしっかり歩めるように力をつけて、いつでも楽しんでいきたいです。すみません、ザックリした感じですが(笑)。

ある時から自分の演じる役を、時々、イラストで描いてイメージを膨らませているとラジオアプリで話してくれた河合優実さん。外見作りから役に入る方だと語っていましたが、脳内に映し出された映像が絵によって姿になり、それをベースにしてキャラクターに自分から近付いていく手法なのかと考えると、そのこだわりに度肝を抜かれます。だから毎回、映画で全く違う姿形になり、一瞬、本人か確認してしまうのかもしれない。インタビューを終え、益々、興味深い役者のひとりになりました。

文 / 伊藤さとり
写真 / 山口昌利


作品情報
映画『女子高生に殺されたい』

女子高生に殺されたいがために高校教師になった男・東山春人。人気教師として日常を送りながらも“理想的な殺され方”の実現のため、9年間も密かに綿密に、“これしかない完璧な計画”を練ってきた。彼の理想の条件は二つ。「完全犯罪であること」「全力で殺されること」。条件を満たす唯一無二の女子高生を標的に、練り上げたシナリオに沿って、真帆、あおい、京子、愛佳というタイプの異なる4人にアプローチしていく‥‥。

監督・脚本:城定秀夫

原作:古屋兎丸「女子高生に殺されたい」(新潮社バンチコミックス)

出演:田中圭 / 南沙良、河合優実、莉子、茅島みずき、細田佳央太 / 加藤菜津、久保乃々花、キンタカオ / 大島優子

企画・配給:日活

©2022日活

2022年4月1日(金) 全国公開

公式サイト joshikoro.com

伊藤 さとり

映画パーソナリティ
年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当。 全国のTSUTAYA店内で流れるwave−C3「シネマmag」DJであり、自身が企画の映画番組、俳優や監督を招いての対談番組を多数持つ。また映画界、スターに詳しいこと、映画を心理的に定評があり、NTV「ZIP!」映画紹介枠、CX「めざまし土曜日」映画紹介枠 に解説で呼ばれることも多々。TOKYO-FM、JFN、TBSラジオの映画コーナー、映画番組特番DJ。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。心理カウンセリングも学んだことから「ぴあ」などで恋愛心理分析や映画心理テストも作成。著書「2分で距離を知事メル魔法の話術」(ワニブックス)。
2022年12月16日には最新刊「映画のセリフでこころをチャージ 愛の告白100選」(KADOKAWA)が発売 。 https://www.kadokawa.co.jp/product/302210001185/
伊藤さとり公式HP: https://itosatori.net