Aug 28, 2021 interview

女優・モデルの三吉彩花が語る、初監督作品 短編映画『inside you』で目指した作品作りの想い

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年齢制限が無く、性別、ジャンル、職業も関係なく作品を応募できる短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)」のSeason1が遂に完成。当初からのメジャーとインディーズを融合するという言葉通り、武正晴監督や山下敦弘監督の他にも若手監督や応募作品の中から選ばれたクリエイター陣が名を連ねています。その中に、監督初挑戦となる俳優の二人の名前が。ひとりは安藤政信さんであり、もう一人は三吉彩花さんです。近年では『犬鳴村』や『Daughters』などに出演する女優でありモデルの三吉監督が生み出す「変化」をテーマにした短編『inside you』の撮影秘話はもちろん、新たな挑戦を続ける三吉彩花さんが才能をどうやって開花させているのかを探るインタビューです。

『Daughters』(公開:2020年)でご一緒したand picturesプロデューサー伊藤主税さんより「【変化】をテーマにした映画を撮って欲しい」とオファーを受けた時、どのように映画を組み立てていこうと思われたのですか。

今回の私の作品『inside you』は最初にキーワードをいくつか文字に起こして、そのキーワードを使った脚本を募集という形で色々な方に書いて頂いたんです。その中から何人かにお会いして、「何故、この脚本を書いたのか」や、その方の人柄などを聞きながらお話をしたんです。その中から今回は相羽咲良さんにお願いしました。まず脚本自体が凄く素敵で、自分の中にスッと入って来たからで“どうしてこの脚本を書いたのか”が凄く気になったんです。実際お会いした相羽さんから出て来る言葉や質問に対する答えが、私が想像していた視点とは全然違う物の捉え方で、それが凄く美しい感性だったんです。その感性を日常的に持っているという部分に惹かれて決めました。

――短編でありつつも、主人公が少女から女性になる過程を感じました。本来の自分の目標を見つける瞬間“女の子はフワッと花が開くような感じになるのかも”と思いました。撮影していく中で“ここはこうしたい”と思ったことはありますか。

どちらかと言うと今回は撮影していくうちに出て来たというよりも、撮るまでに自分の頭の中で映像化されていて、それをしっかりリアルに描きながらちゃんとした作品にしていくことを考えて撮影していました。それに撮影では本当に偶然のような必然のような場面がいくつかあり、天候にも恵まれました。2日間の撮影でしたが凄く特別な2日間でした。

――映画を撮るにあたって意識した点、大事にしたところを教えて下さい。

私は海外の作品を観る時に、登場人物の部屋や、登場人物がその生活にどのくらい馴染んでいるのか、そこでどんな心情になるのかを凄く考えて観てしまうんです。歯ブラシの色、煙草の銘柄、パジャマの形など、どれ一つとっても気になってしまいます。だからこそ、この映画でもアイテムやカメラ一つをとっても、思い描く形に近づけられるように色々と皆で調べてこだわって決めました(笑)。

――カメラのシャッターを押すとそれが銃のようになって赤がパーンと広がるシーンがあります。あの演出、発想はどこから思い浮かんだのですか。

感情を表現するのに“あまり台詞は入れたくない”と思っていたんです。自分の中で何かしらの変化があって、それが爆発する時にどういう感じが美しくて、かつ非現実的過ぎなくて、わかりやすく届く表現は?と考えたところ、あのシーンに辿り着きました。もちろん、スタッフの方達とも意見交換して最終的にあの形に落とし込めた感じです。

――画が“ヨーロッパ映画っぽい”という印象を受けました。普段からヨーロッパのアートや映画を見られたりしているのですか。

ドイツ映画が好きなんです。やっぱり色味が全然違います。もちろん、街並みなどそもそも持っている景色が素敵に映るというのもあると思いますが、どちらかと言うと寒色系というか、ちょっとどんより青っぽい感じが凄く好きで、その中でもちゃんと被写体の服の色とか登場する物の色とかが良い具合に背景とマッチしていて凄く素敵に映るんです。そんなところも含め「やっぱり、ドイツ映画って素敵だな」と思っています。フランス映画も好きですが、最近はドイツ映画をよく観ています。

――だから主人公を演じた山口まゆさんが路地を歩く後ろ姿が日本の路地らしくないと思えたほどです。白いワンピースも映えていたところは、全てのバランスを考えてのことですね。

そうですね。ロケーションも私は全然詳しくないので、皆さんに教えて頂いた場所を実際に見に行って決めていきました。

――最近見たおすすめのドイツの作品はなんですか。

Netflixオリジナルドラマ『DARK ダーク』というホラー作品がお気に入りです。色味も暗いですし、ホラー作品というのもありますが、音楽が印象的で「変だな、不気味だな」と思いました。観客を休める隙が無い、視覚で驚くシーンが無くても急に聴覚から音楽で意識を集中させる要素が沢山あるんです。

後はこれもNetflixで観たのですが2020年に製作された『イントゥ・ザ・ビート~心のままに踊れ~』というバレリーナとヒップホップダンサーを描いた映画も最高でした。私は元々、ダンス映画が好きなので「イェーイ」という感じで観ていました(笑)。2人はプロのダンサーで役者さんというわけではないのですがとても素敵でした。