Jun 18, 2021 interview

過去の記憶に囚われた若者たちの未来への脱出劇、映画『Bittersand』を出演者の井上祐貴、萩原利久、木下彩音が語る

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青春映画でありながら「いじめ」という社会問題にもメスを入れた衝撃作がスクリーンにお目見えする。杉岡知哉監督のオリジナル脚本であり監督デビュー作となる『Bittersand』は、過去の記憶に囚われた若者たちの未来への脱出劇だ。何者かが高校の黒板に描いたクラスの男女の爛れた相関図。誹謗中傷の的となり日常が暗転した、暁人と絵莉子。7年後、25歳になった暁人は絵莉子と運命的な再会を果たす。2人の想いを行き違わせた“黒板事件”の真実を明らかにする為に、暁人は悪友・井葉と共にある計画を目論む……。今回は、主人公・暁人役の井上祐貴さん、悪友・井葉役の萩原利久さん、絵莉子役の木下彩音さんに、作品の魅力やテーマにもなるいじめ問題、そして役への取り組み方などを伺いました。




再生ボタンを押すと井上祐貴さん、萩原利久さん、木下彩音さんのラジオトークがお楽しみいただけます

――『Bittersand』は杉岡知哉監督のオリジナル脚本であり、高校生の時にクラスメイトの恋愛関係が書かれた黒板事件を通して運命が変わってしまった若者たちを描いていますが、脚本を読まれた時の率直な気持ちを教えていただけますか。

井上(祐貴):僕は「(吉原)暁人って強いな」と思いました。【暁人】役として選んで頂いたこともあり、【暁人】目線で若干見てしまった部分もあったと思います。過去の避けてきた部分、しかも7年越しに良くない過去と向き合う、その一歩を踏み出すということは覚悟がないと出来ないことなので、そこは読んでいても演じていても凄く刺激を受けました。

萩原(利久):キャラクターが本当に個性的で、それが台本からも読み取れるんです。初めて台本を読んだ時は想像の段階でしたが、一人一人がどんな人物なのかが文字からも読み取れて、読んでいても面白かったです。それに時代も行き来するので、大人になってちょっと変わっている人も居るし、【井葉】みたいに全然変わっていない奴も居る。そういう人達のやり取りが高校生パートと大人パートではちょっと違ったりするんです。その違いを行き来しながら大きな事件を扱っていくのですが、事件の中でも一人一人の人間関係がとても丁寧に描かれているので初見から楽しかったのですが、自分が演じる事で、より色をつけて行きながらキャラクターを豊かにする作業が更に楽しかったです。

木下(彩音):私は性格が【絵莉子】と似ているというか、結構考え込んでしまうタイプなんです。だから台本を読んでいても“わかるな”と思う部分が多くて、意外と役がスッと入って来た感覚がありました。実は私も基本的には自分で解決しようと思ってしまうタイプの人間で、【絵莉子】も人に相談せずに自分で解決しようとして内に秘めてしまうところがあるし、そこも似ているなと思いました。私と違うのは【絵莉子】は芯が凄くしっかりしているところですね。そこは憧れる部分です。

――井上さんは、この中では【暁人】のようなキャラクターなのですか。

萩原:一番近いのは【井葉】じゃない?

井上:【暁人】と【井葉】で言ったらどっちなんだろう…【井葉】ではないけど【暁人】でもなくって、【遠藤】(柾木玲弥)とか他の登場人物でもない、パッと「この人」というキャラクターは出て来ないですね。凄く難しいラインなんですけど、だけど全キャラクターの所々に共感出来る部分があります。

――【暁人】が友達だったら凄く救われますよね。

萩原:本当にいい奴ですからね。

井上:【暁人】からすれば萩原利久くん演じる【井葉】が一番いい奴で、【井葉】が居ないとあんな勇気ある行動は出来ないんです。本当に全キャラクターが物語に存在する意味があって、出来上がった作品を観ても“誰も欠けてはいけない”と思いました。