Jun 02, 2021 interview

映画『HOKUSAI』で喜多川歌麿を演じた玉木宏が思う「役者には色気が必要」ということ

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「冨嶽三十六景」など3万点以上の作品を描き残したといわれる浮世絵師・葛飾北斎。世界中に知られながら北斎の青年期に関する資料はほとんど残っていない。一体どんな人物だったのか?どんな葛藤を胸に抱えどんな人々と出会って絵師として才能を開花したのか。残された資料をもとに作り上げたオリジナルストーリーとして映画を完成させたのは『探偵はBARにいる』、『相棒』シリーズの橋本一監督。北斎の青年期は柳楽優弥、老年期を田中泯が見事に体現。今回は、北斎に影響を及ぼしたであろう絵師・喜多川歌麿役の玉木宏さんに、役者としての生き様を伺います。




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――『HOKUSAI』出演のお話を頂いた時の感想を教えて下さい。

脚本の面白さもそうですが、キャストに柳楽(優弥)君が決まっていたので「柳楽君と一緒にやってみたい」という気持ちが強かったですね。柳楽君とは共演したことがなかったので。蔦屋重三郎役の阿部寛さんとの共演もありましたが、「同じ、ヒロシだな」と(笑)。阿部さんとは共演したことはありますが、存在自体が凄く大きいので、どんな役を演じられていても圧倒的な存在感を残す方という印象です。

――【喜多川歌麿】を演じるにあたり、絵を描く練習もされていたとお聞きしました。それ以外に準備されたことはありますか。

現場に入ってみないとわからないと思っていました。セットの感じが自分で想像していたものよりもはるかに派手なセットだったし、実際に濡れ場的なものもどこまでやるのかなど、現場に行かないとわからないこともありました。台本を読み込んで、あとは現場で足したり減らしたりする作業だけです。でも今回の現場は凄く面白かったですね。時代劇はどんなことをやっても成立する世界だと思うんです。現代劇だとここまで誇張されると「嘘だ」ということもあるけれど、本当に“こんな世界があった”としか思えないのが時代劇の面白さだとも思っています。

――セットという空間によって役に入りやすいというのはありますか。

それはあります。“これだけ凄いものを作ってもらえた”という思いも当然あるし、本当に独特な世界なので入り込まざるを得ない。部屋には孔雀の羽根の絵が一面に貼り付けられ、【喜多川歌麿】が着ている着物も、中は真っ赤ですし(笑)あんなにも強い色ですから役に入りやすかったです(笑)

――時代劇は台詞回しなども変わるのですか。

今回の役はそんなに固くないです。絵師に関しては、ちょっと一癖ある人達だと思うので現代劇とはそんなに変わっていない気がしました。

――【喜多川歌麿】は、「おめえの描く女(絵)には色気がねえ」と北斎に言い放ちます。役者にとって色気は大切だと思いますか。

確かに俳優には色気が必要だと思います。色気は何だと言われると具体的にはわからないのですが、言い換えると人を惹きつける魅力だと思うんです。だから、あった方がいいなと思います。例えば裸を見せることが色気だとは思っていなくて、立ち振る舞いだと思うんです。それは台詞回しかもしれない、目線かもしれない、それらを想像しながら演じたりします。

――俳優には「色気以外に」何が必要だと思いますか。

台詞があるとマインドや表情も【役】の方に行くけれど、台詞がないところ、例えば踊りだったり、目の表情や動きだったり、音のない中で役の生き様を表現することは凄く難しいと思うんです。台詞のないところでいかにその人の性格を見せるか、そこじゃないでしょうか。台詞があるのは楽だと思います。