――映画でいうと、去年『今日から俺は!!劇場版』があり、本作、7月公開予定の『東京リベンジャーズ』の公開があります。どの作品も不良のような役でありながら、全く違うアプローチでした。
単純に台本を読んで役のことを考えるだけです、それで自然と変わって来る。ジャンルは同じかもしれませんが、どのキャラクターも別の作品の登場人物なので特にキャラクターを演じ分けようとかは思っていません。
――役者というお仕事は楽しいですか?
お芝居をすることは好きです。ただ、どんなところと聞かれると僕自身もわからないです。最初はやりたくて好きで始めてはいるものの、お芝居にはゴールがないので何に対して“面白い”と感じてやっているのか、今はちょうどわからない時期です。でもやっぱり“やりたい!”という気持ちがあるんです。
とても刺激的なお仕事ですし、普通、自分とは違う誰かになって他の人の気持ちを感じることって出来ないですよね、そういったところに喜びを感じています。でも一番はやっぱり届ける人(観てくれる人)が居て、その人達の心に変化を起こすことが出来る。それは勇気づけたり、ポジティブにしたり、逆に言えば観客をマイナスの方に引っ張っていくことも出来てしまうマジシャンみたいな存在でもある、そこが魅力なのかも。
――磯村さんは映画やドラマがお好きで役者という仕事を始められたわけですよね。コロナ禍で撮影が延期になったり映画館が休館したりとエンターテイメントにとっても大変な状況ですが、磯村さんはどう感じていますか?
特に去年の自粛期間中は映画館にも行けなかったですし、俳優達の仕事も全部ストップの状態でした。そんな中でも医療関係者の方々は誰かを救うために一生懸命働いて下さっていて、“僕ら俳優は誰も救えない、俳優という仕事はいらないのではないか”と思ってしまったことが一度ありました。
でも自分が関わってきた過去の作品をその自粛期間中に観て下さった方から「勇気をもらいました」という言葉を頂いたんです。“今は何も出来ないかもしれないけれど、自分が俳優として残して来た軌跡の中でちゃんと想いを届けることが出来るんだ”と、考えるとやり続けることが大事だと思いました。今後のエンターテイメントは、変わっていくとは思っています。
――いつか、こんな映画のこんな役を演じてみたいというのはありますか。
ないんです(笑)何十年後でもいいから作った方がいいとは言われるんですが。
一つ一つの作品に向き合っていく中で今後見つかるとは思うんですけど、今はないです。ただ誰も踏み入れていない場所に行きたいなとは思っています。危険を冒してでも凄いところに挑戦したい、そういう変な好奇心があります(笑)
――色んな方々から影響を受けられていると思いますが、2021年の今思う“役者とは”何だと思いますか。
難しいですね。自分達の仕事で誰かを救えるかもしれない、それが俳優の一つの魅力でもあると思ってはいます。救えたらいいなと思います。
WOWOW開局30周年記念「アクターズ・ショート・フィルム」で監督デビューを果たした磯村勇斗さん。憧れの俳優・綾野剛さん出演作では『クローズZEROⅡ』や『GANTZ』『そこのみにて光り輝く』が印象的だったと話すほど、映画を多く観る若き演技人。役によって全くの別人に見える表情や歩き方から、今後も忘れられない役をどんどん生み出してくれる予感しかありません。なんたって、『ヤクザと家族 The Family』でのナイフのような視線は、多くの人の心に跡を残すだろうから。
文 / 伊藤さとり
撮影 / 奥野和彦
これは、ヤクザという生き方を選んだ男の3つの時代で見つめる、一人の男とその【家族・ファミリー】の壮大な物語。。荒れた少年期に地元の親分から手を差し伸べられ、父子の契りを結んだ男・山本。ヤクザの世界でのし上がる彼は、やがて愛する自分の≪家族≫とも出会う。ところが、暴対法*の施行はヤクザのあり方を一変させ、因縁の敵との戦いの中、生き方を貫いていくことは一方でかけがえのないものを失うことになっていくー。 主人公・山本役に今回初のヤクザ役となる綾野剛。山本に“家族“という居場所を与えた柴咲組組長・柴咲を、ヤクザ役は43年ぶりとなる舘ひろし。その他、豪華キャスト共演のほか、主題歌には綾野自らオファーしたという常田大希がmillennium paradeとして加わり、書き下ろし楽曲で本作を彩る。現代ヤクザの実像を描き、今の世に問題を突きつける、全く新しいスタイリッシュ・エンタテインメント。
監督・脚本:藤井道人
出演:綾野剛 尾野真千子 北村有起哉 市原隼人 磯村勇斗 / 寺島しのぶ 舘ひろし
音楽:岩代太郎
配給:スターサンズ/KADOKAWA
©2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会
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