――どなたかモデルにされたのですか。
ボクサーとしては、ナジーム・ハメド選手。天才で本当に龍太みたいに踊りながら、挑発しながらも滅茶苦茶強い選手なんです。彼は天才と言われているのですが、破天荒だし、ただリング上とちょっと印象が違うんです。日本人だと畑山隆則選手。そもそも監督に「まず、見てくれ」といわれた試合が日本のボクシング史上屈指の名勝負と言われる事も多い、2000年10月11日に横浜アリーナで行われたプロボクシングWBA世界ライト級タイトルマッチの畑山隆則VS坂本博之戦だったんです。
――ご自分のアイディアで取り入れた仕草などありますか。私は窓からピョンと飛び込んでくるシーンも人柄を現していて面白いと思いました。
あのシーンは監督が「窓から入ろうか」と。あの身軽さというか、とにかく普通の龍太、晃と接している時の龍太の軽さは意識しました。跳ぶのもそうですが、晃が自分を変えてくれたのにそのあやふやな感情というか、晃はくすぶっちゃっているし、そんな晃の姿を見るのも正直キツイ。ただ、どこかで自分は変えられると思っている。若気の至りというか、ぶつけまくれば、いつかどこかで何かが変わるんじゃないかという気持ちもある。ただ家族に戻るとトーンがちょっと低くなったり、そんな部分を意識していました。それもリアルに観たボクシングの試合と、関わるキャスト皆とのギャップを感じながら作り上げていった感じがします。
――いつか演じてみたい役を教えて下さい。
ホラー映画も好きなので、サイコパスな役はやってみたいです!例えばですけれど、『ジョーカー』みたいなサイコパスの役も演じてみたいですけど、善人が物語に居て欲しいと思うので、主演ではなくその次くらいのポジションがいいかもですね。
――これから映画をご覧になる方にメッセージをお願いします。
僕個人としてもかなりチャレンジングな映画でもあります。この作品の中で描かれる男の意地とボクシングが精神競技のところとか、リアルでもありながら凄く力強いメッセージがこもっている映画です。女性の皆さんは、そんな彼らを支える女性の強さを体感出来ると思います。前後編、ちょっと長いんですけれども、かなりスピーディーな映画なので、短く感じると思います。是非、映画館でご覧下さい。
「好奇心旺盛なところが取り柄です」とインタビュー中、自身のことを表現した北村匠海さん。9歳で芸能活動をスタートし、23歳にして沢山の演技経験を積み、アーティスト活動も行う多忙な生活の中、毎年、多くの映画に出演しています。龍太のような光と影を持つ役どころは、優しさの裏に見え隠れする空虚さも表現しなければ成り立たない難役。それを見事に体現した彼の演技に目が離せない『アンダードッグ 』。ボクシング映画というよりは、生きづらさを抱える人々の魂の叫びが聞こえてくるようで胸が熱くなりました。
文 ・写真 / 伊藤さとり
『百円の恋』から6年。監督・武正晴、脚本・足立紳をはじめとする製作陣が、キャストに森山未來、北村匠海、勝地涼を迎え、再びボクシングを題材に不屈のルーザーたちへ捧げる挽歌を作り上げた。過去のささやかな栄光が忘れられず〝かませ犬(=アンダードッグ)〟になり果てた今も、ボクシングにしがみつく事しかできない主人公を中心に、人生から見放された三人の男たちのドラマを描く。再び夢を掴むため、過去と・・・そして未来と闘え。どん底から這い上がろうとする負け犬たちの姿が、魂を救う感動のドラマ。
監督:竹正晴
原作・脚本:足立紳
出演:森山未來、北村匠海、勝地涼、瀧内公美 ほか
配給:東映ビデオ
ⓒ2020「アンダードッグ」製作委員会
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