Oct 22, 2024 interview

冨家ノリマサ インタビュー インディーズ映画ながら世界の映画賞を席巻した『最後の乗客』と大ヒット作品となった『侍タイムスリッパー』

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――脚本をすごく読んで出演を決めるとおっしゃっていましたが、監督や作家の人間力を読み解いて、作品に挑まれているということですよね。

はい、その為には本当に自分自身の俳優としての器が少しでも広くないと。頂いた役がどんなに素晴らしい役であっても、その役を演じる俳優がしょぼかったら脚本で描かれている役は絶対に超えられない。何割しか埋められないと僕は思っているので、日々、一生懸命生きることが一番大事なことだと、この歳になってやっと勉強しました。

――『最後の乗客』の【遠藤】という役も、お客さんと向き合うことを大事にされていると思いました。

堀江監督が描かれた【遠藤】という役が、男手ひとつで一生懸命娘を育てている、どこにでも居るいいお父さんなんです。監督には「かっこよくなっちゃうから、かっこつけないで」と言われました。だからなるべく普通のお父さんが無骨ながら娘の為に一生懸命頑張っている、そんな小さなロウソクの炎が見えればいいかなと思いながら演じていました。この映画も『侍タイムスリッパー』同様、広がることを願っています。舞台挨拶も呼ばれたらどこにでも行こうと思っています。

――今後、達成したい目標はありますか。

特に考えてないです。例えば「賞を取りたい」とか「ハリウッド作品に出演したい」とかそういうのは特にないです。強いていえば「いい作品に巡り合いたい」です。また今回の『侍タイムスリッパー』や『最後の乗客』のようないい作品に巡り合いたい。それが一番の幸せです。

この2作品は撮影中も本当に幸せでした。演じていて気持ち良かったです。台本を頂いて大変な役だけれども、撮影に入るまで色々なことを考えている時間も凄く幸せでした。そして、いい作品だと思って出演した映画をお客様が「良かったです」と言ってくれる。これ以上の幸せなことはないと思います。凄くそう思います。

――今後、一緒に仕事をしてみたい監督などいらっしゃいますか。

安田監督と堀江監督です(笑)。このお2人とは合うんです。『ディア・ハンター』(1978)のマイケル・チミノ監督や『ソフィーの選択』(1982)のアラン・J・パクラ監督の現場はどんな感じなんだろうという興味はありますけど(笑)。あのような作品を撮る監督はどんな精神構造で、どんなふうに人を見ているのか?興味があります。人の見方が人間目線ではなく、俯瞰というか神目線で捉えているからこそ、あのような演出が出来るのかも?とも思いますし‥‥。映画監督は凄いですよね。安田監督も堀江監督も凄いと思います。

終始、様々なキャストに気を配り、観客へ感謝を忘れない冨家ノリマサさん。『侍タイムスリッパー』はもちろん、『最後の乗客』の舞台挨拶でも全体を見渡しながらトークを展開し、感極まって涙を流していました。作品に対してはもちろん、人への誠実さを大事にしている冨家さんの主演作『最後の乗客』。多くの観客に届いて欲しいと私自身も願う、一度観たら忘れられない愛に満ちた物語でした。

取材・文 / 伊藤さとり
撮影 / 岸豊

作品情報
映画『最後の乗客』

タクシードライバーの間で “深夜、人気のない歩道に立ちずさむ女“の噂話がささやかれるなか、今日も遠藤はひとりハンドルを握り閑散とした住宅街を流していた。いつもと変わらぬ夜。噂の歩道傍で、手をあげる人影。顔を隠すように乗り込んできた女性が告げた行き先は「浜町」。走り出すや、路上に小さな女の子と母親の二人が飛び出してきた。どうしても乗せて欲しいと言って聞かないその母娘を同乗させると、行き先はやはり「浜町」。奇妙な客と秘密を乗せたタクシーは。目的地へと走りだす。

監督:堀江貴

出演:岩田華怜、冨家ノリマサ、長尾純子、谷田真吾、畠山心、大日琳太郎

配給:ギャガ

© Marmalade Pictures, Inc

公開中

公式サイト gaga.ne.jp/lastpassenger/

映画『侍タイムスリッパー』

時は幕末、京の夜。会津藩士・高坂新左衛門は、密命のターゲットである長州藩士と刃を交えた刹那、落雷により気を失う。眼を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。行く先々で騒ぎを起こしながら、江戸幕府が140年前に滅んだと知り愕然となる新左衛門。一度は死を覚悟したものの、やがて「我が身を立てられるのはこれのみ」と、磨き上げた剣の腕だけを頼りに撮影所の門を叩く。「斬られ役」として生きていくために‥‥。

監督・脚本・撮影・編集:安田淳一

出演:山口馬木也、冨家ノリマサ、沙倉ゆうの

配給:ギャガ、未来映画社

©2024未来映画社

公開中

公式サイト samutai

伊藤 さとり

映画パーソナリティ
年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。 映画舞台挨拶や記者会見のMCもハリウッドメジャーから日本映画まで幅広く担当。 自身が企画の映画番組、俳優や監督を招いての対談番組を多数持つ。 映画コメンテーターとしてCX「めざまし8」、TBSテレビ「ひるおび」での レギュラー映画解説をはじめ、TVやラジオ、WEB番組で映画紹介枠に解説 で呼ばれることも多々。 雑誌やWEBで映画評論、パンフレット寄稿、映画賞審査員、 女性監督にスポットを当てる映画賞の立ち上げもおこなっている。 著書「2分で距離を縮める魔法の話術」(ワニブックス)。 2022年12月16日には最新刊「映画のセリフでこころをチャージ 愛の告白100選」 (KADOKAWA)が発売 。
伊藤さとり公式HP: https://itosatori.net