Aug 14, 2020 interview

『ソワレ』 主演 村上虹郎がコンプレックスに思う、自分の顔が主人公顔なこと

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役者、豊原功補さんと小泉今日子さんが日本映画界に風穴を開けるべく立ち上がった、そんな気がしてならないのです。新鋭、外山文治に監督を託し、主人公たちは世間知らずで若く、恋の逃避行でありながらキラキラ映画ではなく、アップを多用したカメラもなく、説明台詞を削って、役者の演技を前面に信じた画。それは驚くほど力強く、村上虹郎さん演じる翔太がグチャグチャになった感情から脱出する為の出口探しをしている姿や、芋生悠さん演じるタカラの空洞にせざる得ない感情だったりが手に取るように伝わってくるんです。まるで日本映画らしくない。まさにヨーロッパ映画を観た時に感じる気持ち良いわだかまり。映画『ソワレ』は8月28日全国ロードショー。今回は、主演の村上虹郎さんにお話を伺いました。

[特別メッセージ映像] 『ソワレ』主演 村上虹郎さん

再生ボタンを押すと村上虹郎さんのトークがお楽しみいただけます


―― 2016年の舞台「シブヤから遠く離れて」で今作のプロデューサー豊原功補さんとアソシエイトプロデューサー小泉今日子さんと共演されていますが、その時はこの企画をお聞きになっていたのですか?

その時は全く聞いてなかったです。僕が共演した時は、お二人が演劇をプロデュースする為に作られた会社「明後日」もまだ演劇をやっていなかったと思いますし、その時は“映像をやろう”とも言われてなかったです。ただ映画の企画が出た時に、外山監督が僕を最初から選んでくれていたという話は聞いています。僕に関しては当て書きして下さったみたいです。

―― そうなんですね、当て書きされた脚本を読まれた時の感想は?

最初の脚本(準備稿)と決定稿は全く違うんです。イメージで言うと、もっと人物の説明とか立体的にあったシーンの部分が無くなっていて、ある意味人物を多角的に見せていたものを台詞も含めてドンドンと省いている、ヒリヒリさせていった印象です。言葉ではなく映像で“伝わる”と、お客様を信頼して進化していった感じですね。

―― 役者の村上虹郎さんが役者としての芽が出ないであろう雰囲気を放つ役者志望の翔太を演じることに面白さを感じました。エチュードやレッスンシーンはどうやって演じたのですか?意識したことはありますか?

あのシーンはいろんな意味でヤバいですね。でも楽しかったです(笑)僕自身も実際にオーディション日ギリギリで事務所の方に“このオーディション受けませんか”って言われたことがあったんです。当時、僕はオーディション慣れしていなかったし、周りは全員、台本の台詞を覚えているのにギリギリに渡された僕だけは、台本を持たないと演技が出来ない。本当に迷惑をかけたので“申し訳ないな”と思ったことを思い出しました(笑)脚本にあのシーンはあらかじめ書かれていましたが、その時のニュアンスを実体験で経験していたので面白かったです。ちょっと笑っちゃうみたいな感じでした(笑)

―― 映画の中で演劇も綴られるストーリー、二つを求められる役だったと思います。それは豊原さんや小泉さんが舞台をやられているからこそだと感じました。

芸術愛を感じますよね。

―― 翔太を演じる上で参考になった人や出来事はありますか?

アカウントは今も存在していますがここ半年程、SNSを更新する意欲がなくなってしまったんです。映画の方が数は観ていますけど、思っているよりも演劇を観に行っているんです。演劇って、チケットが高いじゃないですか。でも演劇にしかないパワーがあるし、社会的なことも映像よりも語られていて、純度がもの凄く高いんです。親しい人の中にも演劇に詳しい人がいて、話を聞いたり、色々と連れて行ってもらった時期があって、その時の経験は大きかったと思います。やっぱり観ているのと観ていないのでは違うと思うんです。でも難しくて、僕は感覚的には田舎者と都会人のハーフなんです。

半分ぐらい育ちが田舎なので東京に憧れる。“東京に出て勝負してやる”って感覚がわからなくもないんです。でもこっちに来たら親父が居るんで英才教育というか早めに教えるべきことは叩き込まれる。だから知識としてのスピードは早いけれど、経験は比例しないので、僕の中ではちょっと弱みだと思っています。

完璧に東京と距離をとっている翔太は、和歌山という自分のホームに帰りたくないんです、帰ったらおしまいだから。僕の知り合いの役者にも地方出身がいますけど、帰らないですよね。年末にも帰らないし、彼らにとっては少しでも家に帰るというのは、本当に“帰る時”なんです。僕には地元がないので、帰りたくない場所がないんです。会いたくない人はいますけど(笑)。

―― 当て書きだからこその演技だったんですね。プレスに書かれていたのですが豊原功補さんが“翔太はベースボーカル”と仰っていましたが、村上虹郎さんはご自身をどんな役者だと思っていますか?

自分の顔が主人公顔だということはわかっています(笑)これってある意味コンプレックスなんです。もちろんそれを色々なところで活かせるんですけれど。必ずしも主人公を演じないといけないとか演じ続けるというわけではないので。どんな役者かはわからないですけれど、そう考えるとボーカルなんですかね?