Aug 14, 2020 interview

『ソワレ』 主演 村上虹郎がコンプレックスに思う、自分の顔が主人公顔なこと

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―― 村上虹郎さんは、デビューして6年なのに、出演された作品の監督が河瀬直美監督(『2つ目の窓』公開:2014年)、真利子哲也監督(『 ディストラクション・ベイビーズ 』公開:2016年)、廣木隆一監督(『 夏美のホタル 』公開:2016年、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』公開:2017年)、熊切和嘉監督(『武曲 MUKOKU』公開:2017年)などなど、錚々たるメンバーですよね。

あと 三池崇史監督 (『神さまの言うとおり』公開:2014年)、深田晃司監督(『さようなら』公開:2015年)も。オダギリジョーさんの監督作品(『ある船頭の話』公開:2019年)は、撮影がクリストファー・ドイルさん、衣装デザインがワダエミさんですからね。凄い顔ぶれですよね。

―― これだけ凄い監督たちと仕事をされている役者さんは少ないと思います。村上さんが気づいている日本映画の魅力を教えて下さい。 

海外の現場にたくさん行ったわけではないのでちょっとわからないです。ウェス・アンダーソン監督の『犬ヶ島』(公開:2018年)で声の吹き替えをやらせて頂いた時は、特殊なスタイルで、iPhoneでボイスメッセージを撮って送ったものが使われているんです。

日本映画の魅力は独特だと思います。日本映画の現場って“狂っている”と思うんです。僕はその狂っている部分に惹かれているし、その分、今の令和では、狂えなくなってきている。今までの狂うという方法論では通用しない、別の意味でどう狂っていくのか、クレバーになっていくしかないと思うんです。クレバーになったことによって、頭でっかちになってもいけないと思うし。今まではもう少し、生活から役者が暴れてもよかった気がします。その人らしくあれて良かったと思うんですけど、今はそうではない。

今はコロナによって元々、家に居る人の方が有利というか辛くないし、やっぱり外でお酒を飲んでワーッとなる人はワル目立ちしちゃうので。人さえ傷つけなければ素敵なことだと思うんですけど。その話から言うと、個人的には、人は傷つけ合うもので、傷つけ合わないと救い合えないと思うんです。平和って一番平和じゃないと思っています。

嫌いな言葉ですが、あえて使うと「多様性」ってあるじゃないですか、日本はジャンルが広いと思います。僕が今まで経験した監督もそうですが、十人十色、作風が広くないですか。僕の実体験の一つとしては園子温監督と沖田修一監督が居るんですが、そのお二人からして全然作風が違うし、さらに河瀬直美監督も違う。

―― 確かに3人の監督共、映画のアプローチが全く違いますよね。  

もしかしたら宗教とかも作風に関わるかもしれません。一つの宗教を皆が重んじてない、それぞれにとって神が違うから広くなっていく。もちろん神がいない人もいるだろうし、僕にとっても神はいないし、漠然とした神しかいない。そういった日本の広い価値観が魅力なのでは。その分、力が分散してしまうのが日本の弱みだと思います。韓国が強い理由は「宗教」と「狭さ」だと思います。やっぱり苦しめられた人達って強い、三船敏郎さんや三國連太郎さんなど戦時中を知っている方の目には、どう頑張っても勝てないと思っちゃう。ああなるにはどうすればいいのか考えるけど、相当やるべきことがあって一生をかけても追いつけないかもしれません。

村上虹郎くんとは様々な作品の司会でご一緒していましたが、『犬ヶ島』のプロモーションでウェス・アンダーソン監督と、 ジェフ・ゴールドブラム 氏が来日した時のことは忘れない。舞台挨拶でステージにラインナップした姿を目にし、湧き上がった感情は“いつか実写映画でこの光景が見たい”というものでした。絵になる俳優だから。そして『ソワレ』を観た時に感じたのは、“感情は説明しなくても映画だからこそ伝わる”というもの。役者たちに脚本を読む力があれば、監督の世界観を理解していれば、画から様々な情報を感じ取れるアーティスティックな映画になるから。

文 / 写真・伊藤さとり

作品情報
『ソワレ』

俳優を目指して上京するも結果が出ず、今ではオレオレ詐欺に加担して食い扶持を稼いでいる翔太。ある夏の日、故郷・和歌山の海辺にある高齢者施設で演劇を教えることになった翔太は、そこで働くタカラと出会う。数日後、祭りに誘うためにタカラの家を訪れた翔太は、刑務所帰りの父親から激しい暴行を受けるタカラを目撃する。咄嗟に止めに入る翔太。それを庇うタカラの手が血に染まる。逃げ場のない現実に絶望し佇むタカラを見つめる翔太は、やがてその手を取って夏のざわめきの中に駆け出していく。こうして、二人の「かけおち」とも呼べる逃避行の旅が始まった──。
監督・脚本 外山文治
出演:村上虹郎 芋生悠 江口のりこ 石橋けい 山本浩司
配給・宣伝:東京テアトル PG12+
(C) 2020ソワレフィルムパートナーズ

8月28日(金)よりテアトル新宿、テアトル梅田、シネ・リーブル神戸ほか全国公開

公式サイト :https://soiree-movie.jp/

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伊藤 さとり

映画パーソナリティ
年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当。 全国のTSUTAYA店内で流れるwave−C3「シネマmag」DJであり、自身が企画の映画番組、俳優や監督を招いての対談番組を多数持つ。また映画界、スターに詳しいこと、映画を心理的に定評があり、NTV「ZIP!」映画紹介枠、CX「めざまし土曜日」映画紹介枠 に解説で呼ばれることも多々。TOKYO-FM、JFN、TBSラジオの映画コーナー、映画番組特番DJ。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。心理カウンセリングも学んだことから「ぴあ」などで恋愛心理分析や映画心理テストも作成。著書「2分で距離を知事メル魔法の話術」(ワニブックス)。
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伊藤さとり公式HP: https://itosatori.net