―― 群像劇を映像にするのは難しいと思うのですが。
よくそう言われますが、あんまり難しくなかったです。楽しかったです!
―― 登場人物が6人居ますが、とても丁寧にそれぞれの気持ちに寄り添っているように感じました。登場人物それぞれにふくだ監督の一部が居るのでは?と思いましたが。
小説を書いている時は全部の人物に自分の何かは入っていました。“えん”や“琴子”は私の中の陽の部分であり、憧れもあります。特にえんみたいな人が居ることで、 “業平君”のように世界が変わっていく子が居るだろうし、できれば誰のそばにもいてほしいと思っています。 “純”は私の中の凄く陰な、トゲトゲした部分を入れたりしています。皆に自分が入っています。
―― これからどんな作品を撮っていきたいですか。
大人の女性を撮りたいです。人を描いて社会を描くということをやっていきたい。子供を産んだ人のことを書きたいと思っていたんです。『おいしい家族』の時に、自分の出生のことを色々と話していて、私のことを産んだ人ってどういう人だったのか?そういう人が置かれている状況って?子供を手放す人の境遇ってどういう環境に居る人?そういうことを考えたので。
―― また凄い物語を作ろうとされているのですね。
試練的にやりたいですね。
―― 映画作りで伝え続けたいことはありますか?
『君が世界のはじまり』 の台詞にある、“想像すべきことがある”だと思います。皆が思いやりや想像力をもつ。相手の立場になる、全ての事柄に対して、自分事のように考えることが大事なことだと思っています。
―― 何となく今は正義を振りかざすことが増えているような気がします。 “なんで、加害者側のことを考えないんだろう”と思っていた時に、この映画を観たんです。
タイムリーですね。確かに今って、自分目線の主張が強く出てしまう。この間も妊婦さんを蹴ったおじさんのニュースがありましたが、私は“このおじさんはどういう環境で育って、どういう価値観を持ってそうなったのか?”というその人生を知りたいと思いました。想像しますよね。もちろん一番に考えられるべきは被害者のことですが、加害者が何故そうなったのか?も考えるべきだと思います。
―― ふくだ監督が映画監督をしていく上で大切にしたいことを教えて下さい。
自分がやりたいと思うこと以外はやらない。凄い生意気ですけど!でも向いてないなって。オファーを頂いても、企画にのれないときはお断りします。私でないと意味がないと思える企画をやろうと思っています。
『おいしい家族』のインタビューで初めてお会いしたふくだももこ監督は、金髪にオレンジ色の柄物シャツを着て、太陽のような笑顔で笑い転げておりました。あれから10ヶ月、再会してみるとスッキリした表情で凛と立つ姿が美しく…。『君が世界のはじまり』は、紡いだ言葉が、一つ一つ、しっかり、心に刻まれるんですよね。被害者側を考えるだけではなく、加害者側が何故、行動を起こしたのか?映画を観たら、共感できなくても考えていきたい、そんな人間でありたいと、再確認した次第です。いやぁ、すんごい傑作だし、ふくだももこ監督の、いろんな人の心に耳を傾けたい思いが、映画となって多くの人の心の扉を開きますように。
文 / 写真・伊藤さとり
大阪の端っこのとある町。深夜の住宅地で、中年の男が殺害される。犯人は高校生だった。この町の高校2年生のえんは、彼氏をころころ変える親友の琴子と退屈な日々を送っていたが、琴子がサッカー部のナリヒラ君に一目惚れしたことで、二人は徐々にすれ違うようになっていく。 2016年に短編小説「えん」で第40回すばる文学賞佳作を受賞し、映画や舞台、ドラマの演出も手掛け、ジャンルのボーダーラインを軽々と飛び越えるマルチな才能・ふくだももこ。彼女の原点である2本の短編小説「えん」と「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」を再構築した本作。鬼才・向井康介が脚本を担い、新たなストーリーに結実させた。魂を焦がす青春映画の新たな傑作が、ここに誕生した。
原作/監督:ふくだももこ
脚本:向井康介
出演:松本穂香、中田青渚、片山友希ほか
配給:バンダイナムコアーツ
© 2020 「君が世界のはじまり」制作委員会
7月31日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
公式サイト :https://kimiseka-movie.jp/