Jul 25, 2020 interview

「皆が思いやりや想像力をもつ」という事を伝えたい 『君が世界のはじまり』ふくだももこ監督

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人から見たら特殊な感情?でもそれは人から見た一方的な感情で、なんにもおかしなことはないのに。「普通ってなんだ?」という固定概念を引っぺがす、全世界への愛を叫んだ映画『おいしい家族』の次に生み出した映画は、第40回すばる文学賞佳作を受賞したふくだももこ監督による短編小説「えん」(2016年)と、「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」を再構築したもの。しかも脚本は、『リンダ リンダ リンダ』の向井康介というドリームタッグが実現!更に『おいしい家族』の時にすっかり意気投合した松本穂香が主演。泣きたい気持ちも、吐き出したい想いも、不安定な心も、全部全部、歌にして抱きしめたい。観る者から愛しい想いが溢れ出す『君が世界のはじまり』が7月31日に公開となります。

[特別メッセージ映像] ふくだももこ監督

再生ボタンを押すとふくだももこ監督のトークがお楽しみいただけます


―― ふくだ監督が『君が世界のはじまり』の原作である小説「えん」「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」を書こうと思われた理由を教えて下さい。

映画監督を目指して上京をしたのですが、色々なことが立ち行かなくなって、23歳ぐらいの時に“映画監督を辞めよう”と思って地元に帰りました。実家に居たのですが、やることがないけれど、“何か表現をしたい”という思いがあって、すがるように小説「えん」を書き始めたんです。

―― 脚本にしなかった理由は、それだったんですね。

どうやってお金を集めればいいのか?どうやったら劇場公開されるのか?当時は映画の作り方がわからなかったんです。「えん」がありがたいことに賞を受賞して、小説家という肩書を得て、その後に書いたのが「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」です。

―― 小説を書くって、自分の中のものを滅茶苦茶、しぼり出す感じがあると思うのですが。

行動も気持ちも全部書けるので、しんどいけど楽しいです(笑)書いている時に起こった大きな事件にマインドが引っ張られやすくなるので、「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」の時は、書いてる最中に現実で起きた大きな事件に気持ちが凄く引っ張られました。「えん」の時は書くことしかなかったので、自分の中のものを思い出しながら書いてみようって感じでした。

―― 『おいしい家族』と『君が世界のはじまり』、トーンが違う作品に感じました。何か切り替えるようなきっかけがあったのですか。

題材にしているテーマは一緒なので脚本が向井康介さんというのが大きいのかもしれません。『おいしい家族』は、テーマをストレートに描いていますが、『君は世界のはじまり』は、テーマを観客に考えさせるようになっていると思います。画のテイストは、少し変えました。