Jul 17, 2020 interview

配信と劇場で同時公開 行定勲監督が語る観客への新しい映画の届け方

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―― “映画監督行定勲”、その監督が今回“配信と劇場公開を同日に”という方法を考えついた。配信によって200ヵ国で映画を観ることが出来る、そういう配信が持つ可能性についてどう思われますか?

頭でっかち過ぎたなって(笑)劇場で公開するものが映画だ!って思い込みし過ぎたなって。よく配信になるとカットとか寄りとかアップとかも、もっとアップにするっていう人がいるけれど僕は絶対に変えない。

僕の頭にあるものを完成して観る時は全部一緒。だって、実際に昔はスクリーンで編集チェックをしていたのが、今はテレビモニター画面で編集チェックをしているんです。時代は変わったんです。ほとんどの監督もデジタルになってから、皆そうしているんです。

スクリーンで観るのが映画って思うのではなく、何を作りたいか?劇場用映画といわれている作品は、劇場にお客さんを呼びたいから作られているんです。だったら劇場用ではなく、配信で自分が個人的にどうしても作りたい作品、テーマを作って発表してもいいんだ。

外国では配信された作品も映画賞にエントリーできる、どっかで拾ってくれるかもしれないじゃないですか、そしたら作品は映画とみなされる。日本では映画の規定というか、公開出来なかった場合、映画じゃないとみなされるかも知れないけど。作品を発表する一つの選択肢としてあるし、何が出来るかといえば、 その多様性の一端を担うのが配信作品だと思っています。

映画館はむしろ、コロナ以降は特に困窮しているから、やっぱりお客様が入る映画 (今までもそうだったかもしれないけど)だから丁度、純文学のような真ん中に位置する『劇場』や『パレード』(2010年)など、これまで僕が幸せな状態で撮り続けてきた製作費1億から2億ぐらいの映画は劇場を存続させる為に作りにくくなっていく時代にドンドンと突入していくと思っています。

“こういう作品が撮れなくなったらどうすればいい?”ってなった時に配信でも発表しないと自分という存在がないのと一緒。

『ナラタージュ』(2017年)って企画から映画公開まで約10年かかったんですから。

―― 行定監督は、以前からずっと仰ってましたよね。大きい作品も撮るけれど、自分が個人的に凄くやりたい作品は、中間の作品で、これからもずっと生み出していくって。それが配信でもありえるということですよね。

ありえると思います。権利の問題でいうと配信では作った映画制作会社が直接的に映画が生み出したお金を得られます。間に配給が入っていないので、直接受け取れる。

映画を作り出した人たちへの権利や収益の配分を考え直さないといけない課題はあると思います。

―― 映画館公開とネット配信では監督収入に差が出てくるのですね。

それはわかりません。これからどんな取り決めが起こるかも。現状の映画界の規定は、昔から変わっていません。興行の段階で得られる権利はありません。

それでも映画を撮りたいという想いが勝っている。自分は好きなものを撮ってちゃんと届けたいという思いが常にある。『劇場』は作りたい映画だったのでこの映画はどうしても届けたいんです。

withコロナの時代に、一人でも多くの観客に映画を楽しんでもらう上で、お見事と言える決断をした行定勲監督。今までミニシアターを経て、大手配給会社で『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)を始めとする大作から、『パレード』などの中型規模の作品も生み出し続け、日本アカデミー賞では『GO』(2001年)で最優秀監督賞受賞、『北の零年』(2005年)優秀監督賞と、日本映画界においてとても重要な監督だ。今回の同日公開/配信という決断が、この後の各映画賞にどのように影響するのか?個人的には、“映画館で上映されたものは映画である”と見なしているし、映画館で見てもらうために作られた映画であることには違いない。それが、劇場公開と配信が同日であろうとも、映画のクオリティは全く変わらないのだ。コロナ禍で生まれた革命的な試みが、今後の映画界の規定を変えるかもしれない。いや、変わって欲しいと願うばかりだ。

文 / 写真・伊藤さとり

作品情報
『劇場』

夢を叶えることが、君を幸せにすることだと思ってた―演劇を通して世界に立ち向かう永田と、彼を支えたいと願う沙希。夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会った。又吉直樹2作目の小説は、生涯忘れることができない恋を描いた恋愛小説。監督を務めるのは、『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)『ナラタージュ』(17)等、時代ごとに新たな恋愛映画のマスターピースを贈り続けてきた行定勲監督。主演は、『キングダム』の大ヒットの記憶に新しい、山﨑賢人。ヒロインは、『万引き家族』(18)で世界に認められた若き実力派女優、松岡茉優。その他に寛一郎、伊藤沙莉、浅香航大、井口理など多才な顔ぶれが集結。
監督:行定勲
出演:山崎賢人、松岡茉優
原作:又吉直樹「劇場」(新潮文庫)
配給:吉本興行
 © 2020 「劇場」制作委員会 

7月17日(金)より全国公開
同日よりAmazon Prime Videoにて独占配信開始

公式サイト :https://gekijyo-movie.com

伊藤 さとり

映画パーソナリティ
年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当。 全国のTSUTAYA店内で流れるwave−C3「シネマmag」DJであり、自身が企画の映画番組、俳優や監督を招いての対談番組を多数持つ。また映画界、スターに詳しいこと、映画を心理的に定評があり、NTV「ZIP!」映画紹介枠、CX「めざまし土曜日」映画紹介枠 に解説で呼ばれることも多々。TOKYO-FM、JFN、TBSラジオの映画コーナー、映画番組特番DJ。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。心理カウンセリングも学んだことから「ぴあ」などで恋愛心理分析や映画心理テストも作成。著書「2分で距離を知事メル魔法の話術」(ワニブックス)。
伊藤さとり公式HP: https://itosatori.net

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