パン屋さん巡りがしたいあまりに転生してしまうかも(笑)
──ベイリーはイーサンのことが大好きなあまり何度も生まれ変わりましたけど、花澤さんがこれのためだったら転生できるみたいなものってありますか?
私、パン屋さん巡りをすることが好きなんです。パン屋さんって、次々と新しいお店ができるから全部回ることは不可能なんですけど、何回も転生して全パン屋さんを制覇したいです(笑)。
──もし次の人生をやり直すチャンスがあったら、また今の仕事をされてたいなって思われますか? パン屋さん以外で(笑)。
そうですね(笑)。ここまで色々なことに挑戦できるお仕事ってないと思っているので、生まれ変わってもまたやりたいですね。おそらく他のお仕事はできないと思うんです…。というのも私、本当に物覚えが悪くて。高校時代にファストフード店でバイトしたときも、“君は笑顔だけはいいんだけどね”って言葉を最後にシフトを入れてもらえなくなったりしたこともありました(笑)。唯一私に向いているこのお仕事に出会えて、心からよかったなと常々思っています。
──今回のように実在の役者さんに声を当てるのと、アニメのキャラクターを演じるのとでは感覚が違いますか?
やっぱり違いますね。最初は、声を当てている女優さんとシンクロするのが難しかったです。外国の映画やドラマって、わりと話すテンポが早くてポンポン会話が進んでいくんですよね。そういうときに私って日本人的なんだなと思うんですけど、すごくゆっくり話したり、会話に間があったり、人のことを思いすぎてしゃべれなかったりとか、そういう会話における文化の違いみたいなものはすごくあるなと感じました。あとは、外国の俳優さんの顔の筋肉の発達具合に、私の声の表情では全然足りないなと思ったりとか。それから、身振り手振りのアクションもけっこう激しかったりするので、普段アニメでアフレコしているときのパワーより、もっと大きいものを出さないとシンクロしていかないんですよね。そういうことを学べたのは大きな収穫でした。
──これから今作に触れるたくさんの方々へ向けて、『僕のワンダフル・ライフ』の花澤さんなりの見どころを伺えますか?
私は共感できる部分がたくさんあったので、いま現在ワンちゃんと過ごしている人、過去に過ごしたことのある方は、その子との思い出がきっと浮かんでくるはずです。私もサラちゃんと、もうちょっと一緒に過ごしておけばよかったなとか、会えなくなってからわかることもありました。そういう気持ちがベイリーが転生して会いに来てくれる姿を観ることによって、なんとなく救われるような気がするんです。実際にこういうことがあったらいいな、こうあってほしいな、と希望へと導いてくれるような気がします。
──もしかしたら今はサラちゃんも転生して、別のご家庭で過ごしているかもしれませんね。
そっちのお家の方が居心地良いなーって思っていたりして(笑)。今はもう会えなくてもサラちゃんが心の中にはいつもいるので、そういう思いを抱えている人には救いのあるストーリーです。動物と一緒に過ごす時間のかけがえのなさ、切ない思い、様々な気持ちを呼び起こしてくれる作品です。犬と飼い主の絆が描かれている作品ではあるのですが、家族の物語であったり、恋愛の要素もあり、様々な愛の形、そして絆が描かれている作品なので、ワンちゃんと過ごしたことのない方でもお楽しみいただけると思います。
──最後に、otoCoto読者へオススメの本を一冊伺えますか?
辻村深月さんの「ハケンアニメ!」です。文庫版の応援コメントをご依頼いただいたことがきっかけで読んだのですが、アニメ業界で働く女性たちの仕事に賭ける思いや、仕事をする上でぶつかる悩み、喜びなどがリアルに描かれています。私も縁の深い世界なのですが、アニメ制作チームのみなさんのお仕事をより深く知ることができて、それまで見えていた世界がもっと身近に感じられるようになりました。アニメの世界が舞台ですが、“お仕事モノ”としても楽しめる作品です。
取材・文 / 加藤蛍
撮影 / 佐野円香
花澤香菜
1989年2月25日生まれ、東京都出身。2003年声優としての活動をスタート。これまでにアニメ、ゲーム、ナレーション、吹き替え、ラジオドラマなど多種多様なジャンルにて活躍中。その演技力の高さと、聴く者の耳に残る印象的な声により、多くのファンから支持を集めている。2012年に歌手デビューを果たし、11枚のシングルと、4枚のアルバムをリリース。いずれも高い評価を受けている。
『僕のワンダフル・ライフ』
ゴールデン・レトリバーの子犬ベイリーは、とあるきっかけで出会い、自分の命を救ってくれた少年イーサンと固い絆で結ばれていく。イーサンやその家族、そしてガールフレンドのハンナと一緒に楽しい時も、悲しい時も共に過ごし友情を育んでいった。やがて寿命を終えたベイリーは、愛するイーサンにまた会いたい一心で生まれ変わりを繰り返すようになるが、なかなかイーサンに遭遇することができない。何度かの“犬生”を全うし、3度目の生まれ変わりでようやく中年になったイーサンに出会えたベイリーは、自身に与えられたある使命に気がつくこととなる。
監督:ラッセ・ハルストレム
原作:W・ブルース・キャメロン 「野良犬トビーの愛すべき転生」(新潮文庫)
出演:デニス・クエイド、ペギー・リプトン、K.J.アパ、ブリット・ロバートソン、ジョシュ・ギャッド
日本語吹き替え版:大塚明夫、松岡洋子、梅原裕一郎、花澤香菜、高木渉
配給:東宝東和
2017年9月29日(金)TOHOシネマズ 日劇他、全国ロードショー
© 2017 Storyteller Distribution Co., LLC and Walden Media, LLC
公式サイト:http://boku-wonderful.jp/
「野良犬トビーの愛すべき転生」W・ブルース・キャメロン/新潮文庫
兄弟姉妹に囲まれ、野良犬としてこの世に生を受けた僕。生まれ変わった僕は、イーサンという少年の家に引き取られ、ベイリーと名づけられる。イーサンと一緒の時間を過ごしながら喜びも悲しみも分かち合って成長した僕は、歳を取り、やがて幸福な生涯を閉じる。ところが、ある日また目覚めると、今度はメスのエリートという犬になっていた! 警察犬として厳しい訓練を受け、遭難した少年の救助に命がけで向かうが…。原題は「A Dog’s Purpose」というタイトルで、作者が愛犬を亡くした恋人のために書いた小説。2012年に日本語翻訳され、出版された。
「ハケンアニメ!」辻村深月:著CLAMP:画/マガジンハウス
伝説の天才アニメ監督・王子千晴が、9年ぶりに挑むアニメ「運命戦線リデルライト」はプロデューサーの有科香屋子が渾身の願いを込めて王子を口説き落とし、ようやくスタートにこぎつけた作品。同じクールには、期待の新人監督・斎藤瞳と、次々にヒットを飛ばすプロデューサー・行城理がタッグを組む「サウンドバック 奏の石」もオンエアされる。今クールのハケンをとるのは、はたしてどっち? そこに絡むのはネットで話題のアニメーター・並澤和奈や聖地巡礼で観光の活性化を期待する公務員・宗森周平などのひと癖もふた癖もある人たち。ふたつの番組を巡り、誰かの熱意が、各人の思惑が、次から次へと謎を呼び新たな事件を起こす! 熱血系お仕事小説。