脚本完成まで、一晩で何が起こったのか…?
──監督とお話されてから脚本が仕上がるまで、その一晩で何が起こったんでしょうか?
じろう 結局は自分の気持ちの問題ですかね……(笑)。土下座をしたことによって僕は解放されたというか、逃げ道がないんだなってわかったんですよ。それでもう諦めがついたんです。年明けに脚本を仕上げる予定が、全く書けていなかったので年末年始もずっとこの脚本のことを考えていて。でもどこかでまだ辞められるんじゃないかという考えがあったから、たぶんスイッチが入らなかったんだと思うんです。
大九 その時、「降ろしてください」っておっしゃっていたら、私も事の重大さに気づいたのかもしれないんですけど、必ずどこかにおもしろを入れてくるじゃないですか。
じろう それは芸人の悪いところですよね(笑)。
大九 だから私も「はいはい、わかりました」「おもしろをありがとうございました」という感じになっちゃって(笑)。後から聞いて本当にびっくりしました。
──その土下座以前に、上がった脚本に対して大九監督は「こういうのじゃないんです」とおっしゃったとか。
大九 私、それ覚えていないんですよね。そんな酷いことを、尊敬するじろうさんに言うはずがないなって。
じろう 言われましたよ(笑)。
大九 もしかしたら、この原作をどういう映画にしたいかということをちゃんと伝える前に書いてもらって途中で見せてもらったものが、わりとエピソードを抽出したものだったのかもしれません。私が合流して1回目の打ち合わせの前だったのかな……。その時、確かに言ったかもしれない。思い出してきた(笑)。
──第一稿という感じですかね。ある意味、それは原作には忠実だったかもしれないけれど何かが違うという。
じろう そうです。原作の中の印象的なエピソードだけをピックアップして、それを繋いだものを持っていったんですよ。そしたら「違う」と言われて、じゃあ原作があっても意味がねえんじゃん! ってなって(笑)。その時、ヤバいと思いましたね。(原作を)なぞるだけじゃダメな仕事を引き受けちまったって。
大九 あはは(笑)。たぶん、ゼロから作れる人って原作がある方が辛いと思うんですよね。
じろう ああ~(納得)。
大九 私も最初は自主映画で自分でシナリオを書いていたんですけど、その後、原作ものを預かるようになった時、やっぱりすごくしんどかったですもん。原作を咀嚼しきれず、エピソードをなぞっちゃうんですよね。
──その第一稿にダメ出しをした後、監督からはどんなことを?
大九 お願いをいっぱいしたのを覚えています。この物語は、婚活“あるある”ももちろん面白いけれど、タカコ(黒川芽以)とケイコ(臼田あさ美)のリアルな人間関係がすごく面白いから、女同士の物語として作りたいんですと言いました。あと、ケイコが親に毒づくシーンが原作にあるんですけど、そこを広げたいとお願いして。そこから1カ月後くらいの土下座だったと思います。