公開前は“合格発表を待つ受験生”の気分
──桐生と、松嶋菜々子さん演じる妻・望(のぞみ)のシーンは胸を打つような台詞も多く、だからこそ桐生の葛藤や苦しみ、妻を想う気持ちに心を掴まれたのですが、望という女性は大沢さんから見てどのように映りましたか?
とても素敵な女性だと思います。奥深さや柔らかさ、そして優しさは望に限らず女性が持つ魅力的な部分だと思いますし、母性のような男性にはないものに触れた時に素敵だなと感じます。それは僕だけじゃなくほとんどの男性がそう思うのではないかと。
──これまでに観たことのないサスペンス超大作に仕上がっていると思いますが、いまはどのような心境ですか?
これから世の中でこの映画がどう評価されるのか、それがすべてなので、公開前(インタビュー時)のいまは一番悶々としている時期かもしれません。例えると、試験を終えて合格発表を待っている受験生みたいな感じなんです(笑)。その待っている間は楽しいことをして遊ぶという気分にはなれないですよね。その結果次第で受験生だったら人生が大きく変わってしまったりするので、大げさではなく、いまはそういう心境だと言えます。
──本作は10年後の日本が舞台となっていますが、大沢さんは10年後の日本の映画業界に対して何か願望はありますか?
まず、10年後には間違いなく世界のエンターテイメント事情が変わっていると思いますし、すでに激変していると思います。だから10年後の日本の映画業界について僕が何かをお話ししても、それはあまり意味がないというか。そのうえ今回の映画のように、AIが何でも判別して、それを人間が信用して善し悪しを決める世の中になっていくかもしれないですよね。だからいまのうちに自分ができることは頑張ってやっておかないと、とは思っています。映画もTVドラマもこの先、5年10年と作られ続けていくのかどうかさえわかりませんから、僕自身もこれからの4~5年はお芝居の片をつけるぐらいの気持ちでしっかりと向き合うつもりです。