Jan 28, 2020 interview

10年後は世界のエンタメ事情が変わっている―大沢たかお、俳優としてのいまの心境を語る

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2018年にロンドンのウエストエンドで舞台『The King and I 王様と私』に挑戦し、昨年は『キングダム』の王騎役を好演して新たな魅力を見せた大沢たかお。最新主演作となる『AI崩壊』では、人を救うためにAI(人工知能)を開発した天才科学者・桐生浩介を演じている。『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』(17年)をヒットに導いた入江悠監督のオリジナル脚本となる本作の現場で感じたこと、俳優を続けるうえでモチベーションにしていることなどを語った。

こだわりを追求できるオリジナル脚本

──入江監督が「大沢さんの言ってくれる一言で、こちらもハッと気付かされることもあった」とコメントされていたのですが、現場では監督とどのようなお話をされたのでしょうか?

例えば、原作がある映画の場合は現場でアイデアを出してもなかなか変更できなかったりするんです。なぜなら原作者の方が何年も試行錯誤しながら書き上げたものなので、人物構築から背景、物語の構成などがすでにしっかりと出来上がっているから、変える必要がないんですよね。ところがオリジナル脚本の場合、とくに今回は入江監督が書かれているので、“生みたてホヤホヤの状態”といった感じで、撮影中もいろんな調整ができるし、まだまだ人の息吹が込められる余白みたいなものがあったんです。「こうしたら素敵な映画になるんじゃないか、良い映画になるんじゃないか」と監督にいろいろと提案して、それを反映させていただきながら撮っていきました。

──大沢さんのなかで一番こだわった部分を教えていただけますか。

僕が演じた桐生がテロリストの容疑をかけられてからは逃亡劇になるので、予測不能な展開にしなければいけないと思いました。できる限りお客さんを騙して、アッと驚かせるようなエンターテイメント作品にしたほうが絶対におもしろいですから。そう考えると桐生というキャラクターが綺麗すぎてもつまらないし、お客さんが飽きてしまってもいけないので、「この人では問題を解決できないんじゃないか?」と冒頭で思わせる必要がありました。物語が進むうちにだんだん桐生が必死に危険を回避して、奇跡的に逃げ続けられる展開にしたほうがドラマチックに見えると思ったので、そこはこだわって演じていました。

──“ごく普通の人間として居続ける”ことをつねに考えながら桐生を演じられていたそうですが、だからこそ「彼はAIの暴走を止められるのか?」とハラハラしながら楽しめることができたように思います。

逃亡が始まる前の段階で、桐生の弱さや強さといった人間味を見せることが大事だと考えました。もちろん逃亡が始まってからもそこは意識していたというか。桐生はひたすら逃げ続けるのですが(笑)、大きな道路から始まって下水道や貨物船などいろんなシチュエーション、しかも実際の場所でロケをして撮っています。そんなふうにリアルな画で見せていくのはさすが入江監督だな、と。ただ、そんななかで桐生が走る動機が嘘っぽかったり、「この人、かっこつけてるな」という姿が見えた瞬間に観客がつまらなく感じてしまうと思ったので、そういったことも監督と相談しながら撮影していました。