Feb 22, 2019

インタビュー

「歴史を変える分岐点になる」ジョン・カビラが語る今年のオスカー、授賞式でのあの“事件”

映画人の“人間力”の凄さを感じたあの“事件”

 

──日本の作品では『未来のミライ』が長編アニメ映画賞に、そして是枝裕和監督の『万引き家族』が外国語映画賞にノミネートされていますね。

授賞して壇上に立つ是枝裕和さんを見ることができたら最高ですよね。『万引き家族』は第71回カンヌ国際映画祭で日本映画では21年振りとなる最高賞・パルムドールを獲ってますから、こちらも大いに期待できると思います。

 

『万引き家族』(Blu-ray・DVD 2019年4月3日発売) ©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

 

──10年以上、案内役を務められてきた中で、最も印象に残っている授賞式でのエピソードを教えていただけますか。

やはり2年前、作品賞を『ラ・ラ・ランド』と『ムーンライト』を間違えて発表してしまった事件ですよね。あれを超える混乱は今までなかったと思いますし、あのハプニングを僕らはどう伝えたらいいのかと考えたのも思い出に残っています。あの時、何より素晴らしかったのは、ミスが発覚した直後に「『ムーンライト』を作った友人に手渡しできることを誇りに思う」と『ラ・ラ・ランド』のプロデューサーがスピーチしたこと。どれだけ映画を愛してるんですか! と言いたくなりますよね。その姿を見て、映画に携わる人たちの底力というか人間力は凄いなと感動しました。

──最近ですとピザが会場に届いたりハリウッドスターたちが会場近くの映画館にサプライズ訪問したりして盛り上げていたのが印象的でした。

今回は司会者不在が正式に決定して、もしかして何かビッグサプライズがあるのか、もしくは淡々と始まって淡々と終わるのか。エンターテイメントな見せ方をする授賞式なので淡々と、というのは無いとは思いますけど(笑)。

 

 

アメリカならではの授賞式での社会的なメッセージ、今年はどうなる?

 

──楽しいサプライズだけではなく、白すぎるオスカーやMeToo運動など社会問題も絡めて話題になることも多いですよね。

妖精の国やテーマパークといった非現実的なところにいる人が作った映画ではなく、今を生きる人たちと同じ世界に生きる人間が作っている映画なんだということを感じさせてくれます。社会的なメッセージを発信するのが当たり前というカルチャーには魅力を感じますし、どこか遠い国にあるものではなく、リアルなメッセージを届けてくれるのは嬉しいですよね。

──日本では社会的なメッセージをああいった場で発言するのはなかなか難しいですよね。

日本だと忖度しなくてはいけない場面があったり、発言には必要以上に気を付けなくてはいけなかったりしますからね。基本的に上下関係や男女差別、官尊民卑といったものが昔から根付いている。いろんな帳(とばり)のようなものがある国ですから、社会的なメッセージを発言するのは難しいでしょうね。ただ、アメリカが抱えている問題というのは僕らの想像を超えるようなことであって、日本より深刻だと思うんです。そういう意味では単純比較はできませんが、アメリカは表現の自由が圧倒的にある国だと思います。

 

 

──今年の授賞式ではどんなメッセージが発信されると思いますか?

やはりトランプ政権になったことで“分断”を意識せずにはいられないですし、逆に多様性を押さえ込もうという意見もある。また、ポリティカル・コレクトネスなんてくそくらえという人もいます。今の時代を揶揄、そして風刺するコメントをする人は必ずいるでしょうね。面白いのが、作品賞にノミネートされた『ブラック・クランズマン』と『バイス』を観ると、何故いまトランプ政権なのかということがわかるモチーフがいくつか出てくるんです。「これってトランプさんが言ってない?」という台詞が出てきた瞬間に反応してしまいました(笑)。公開されたらぜひ台詞にも注目してみてください。

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