サプライズヒットが生まれやすい一年に
では、2020年はどんな作品が話題を集めるのか? 大ヒットという点からは、例年以上に予測が難しい一年になりそうだ。2019年末からの『アナと雪の女王2』や『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』が、2020年の興収ランクに反映されるので上位につけるだろうが、その後のメガヒット確実作は少なめ。逆に言えば、だからこそ、サプライズヒットが生まれやすい、楽しみな一年になるだろう。
まず注目したいのが、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』。ダニエル・クレイグのジェームズ・ボンド役が本作で最後になることに加え、『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレックがボンドの宿敵として登場することで、盛り上がりは確実だ。クレイグがボンドを演じた作品の日本での興収は、『カジノ・ロワイヤル』22.1億円→『慰めの報酬』19.8億円→『スカイフォール』27.5億円→前作『スペクター』が29.6億円と、安定した数字を残し、ここ2作はアップしている。監督は日系のキャリー・ジョージ・フクナガで話題も豊富なことから、作品の仕上がりによっては大きく数字を伸ばすポテンシャルを秘めている。
2019年の『ジョーカー』の好成績を追い風にしそうなのが、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』。『ワンダーウーマン』(17年)、『アクアマン』(18年)と、DCユニバースの作品もMCUと肩を並べる人気を固めてきたなかでの公開。しかも『ジョーカー』と同じくR指定(17歳未満の鑑賞は保護者の同伴が必要)が決まった。つまり、危険な魅力で惹きつけるという“賭け”に出るわけで、刺激を求める観客に狙いを定める。『ジョーカー』のような一大現象を作ることができるか? DCユニバースは『ワンダーウーマン 1984』も控え、こちらもここ数年の80年代ブームが意識されていそう。
80年代ということなら、『トップガン マーヴェリック』への期待感も高まる。1986年の『トップガン』が、いまなお記憶に鮮明に残っている人は意外に多いうえ、トム・クルーズの安定感が加味され、夏の話題作の中心になる可能性が高い。うまくいけば興収50億円あたりが射程に入るのではないか。そのほかに“大化け”の可能性があるのは、超人気ゲームを実写化した『モンスターハンター』あたり。『バイオハザード』で日本発のゲームを実写化して成功させた、ポール・W・S・アンダーソン監督と、ミラ・ジョヴォヴィッチのコンビという点が気になる。
映画ファンには必見の作品となると、89歳になっても相変わらずハイレベルな監督作を送り出す、クリント・イーストウッドの最新作『リチャード・ジュエル』や、またもや映画の常識を変えるであろうビジュアルとストーリーを提供する、クリストファー・ノーラン監督の新作『TENET テネット』が挙がってくる。
そう考えると、2020年はディズニー作品が例年ほど目立たないかもしれない。名作アニメーションの実写化『ムーラン』は、ミュージカルではなくアクション映画の色合いが強くなっていそう。期待したいのはディズニー/ピクサー作品で、『2分の1の魔法』、『ソウル(原題)』と2作が公開されるので、そのオリジナリティが受け入れられればメガヒットにつながるはずだ。