『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(4月10日公開)
予想どおりのヒット作から、サプライズで社会現象になった作品まで、2019年の洋画はさまざまな盛り上がりを見せてくれた。いくつかのトピックで一年間の動向を振り返りつつ、2020年はヒット作や話題作がどんな状況になりそうかを予想してみた。ピックアップした作品の中から、2020年の特大ヒット映画が生まれるのか? あるいは予想外の傑作が現れるのか? 期待を高めながら、新しい年を展望してほしい。
予想以上の話題を集めた作品、安定のヒット作
年間の総合興行収入が過去最高を記録しそうな2019年。メガヒットの目安となる100億円超えは3本で、そのうち洋画は『アラジン』(121億円)と『トイ・ストーリー4』(100億円)の2本だった。この2作が象徴するように、2019年は“予想どおりの大ヒット”と“サプライズの大ヒット”が混在する一年だったと言えそう。9年前のシリーズ前作が108億円だった『トイ・ストーリー』は、その後の安定したキャラ人気もあって、今回の新作も想定どおりのヒット。一方の『アラジン』は、“ディズニー”“ミュージカル”という要素で、ある程度のヒットは予想されたものの、洋画の年間トップに躍り出ると予想する人は少なかった。
2018年の『ボヘミアン・ラプソディ』のように、ここ数年は、こうしたサプライズの爆発的ヒットが生まれやすくなっている。“誰かと思いを共有したい”というSNSや口コミによる拡散が、ますますヒットの行方を左右しているようだ。そんなサプライズの、2019年における象徴が『ジョーカー』。アメコミのヴィラン(悪役)を主人公にした映画が、まさか50億円に到達するとは、誰も想像すらしなかったはず。アメコミ映画としては異例のヴェネツィア国際映画金獅子賞(グランプリ)を受賞したことで、映画ファンの関心を高め、実際に劇場で観た人が、ホアキン・フェニックスの演技も含め、その世界に没入。なおかつ、何が何だかわからない奇妙な後味に襲われ、その感覚が“観たい欲求”として広まった。ある意味で、ヒットのプロセスとしては“健全”な現象かも。公開週からしばらくの間、極端な下降が見られなかったのも、『ボヘミアン・ラプソディ』と同様だった。
想定内のヒットとして挙げられるのは、『アベンジャーズ/エンドゲーム』で、マーベル映画の人気が定着し、とりあえずの“完結”を観届けたいファンを集めたことで、61億というMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)最高の数字を叩き出した。洋画3位の66億円を記録した『ライオン・キング』は、ディズニーミュージカルのポテンシャルからいえば、もう少し数字を伸ばしたような気もするが、最新CGの動物キャラの映画ということで大健闘とも言えるかも。『アラジン』『ライオン・キング』とディズニー名作の再映画化(実写化)が2019年はブームだったが、『ダンボ』『メリー・ポピンズ リターンズ』あたりは思ったほど数字を伸ばせず、作品によりけりという結果に。
日本カルチャーと80年代、ホラー、Netflix作品
ブームといえば、2019年は日本カルチャーのハリウッド実写化が相次いだが、『アリータ:バトル・エンジェル』『名探偵ピカチュウ』『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のどれもが残念、あるいはそこそこの成績。このブームは2020年も続くので、起死回生のヒット作に期待したい。また、ミニシアターでブームに至る洋画がほとんどなかったのも、2019年の特徴。クエンティン・タランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』はブラピとレオの共演で話題を集めたわりに“悪くない”数字(11億円)で落ち着いた。むしろアカデミー賞作品賞の『グリーンブック』がスマッシュヒットとなり、久々に“オスカー効果”を発揮したと言える。
そのほか、2019年のブームのキーワードを挙げるなら、“80年代”と“ホラー”か。『チャイルド・プレイ』『ターミネーター』など80年代に始まったシリーズの新作に、1980年の『シャイニング』の続編となる『ドクター・スリープ』、同じくスティーヴン・キング原作の『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』は80年代と現在が行き来して…と、懐かしい“怖さ”の復活が目立った。そして後半に来て『アイリッシュマン』『マリッジ・ストーリー』など、ますますNetflixがハイレベルな作品を量産したのも、2019年のトピックだ。