May 29, 2018 column

唯一無二の存在感! 俳優・山田孝之の魅力と愛される理由を分析する

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ハマり役のワイルド系キャラ、演技力で魅せる“静”の芝居

 

福田監督との出会い以降、ユニークな役柄や作品選びが目立つようになってきた山田孝之だが、彼を語る上でのキーパーソンの一人として、小栗旬もいる。小栗とは『クローズZERO』(07年)での共演をきっかけに、お互いの家に行き来し、時に連泊するほどの大親友。もともと芝居に懸ける情熱が同じベクトルを向いていたのだろう、小栗が自身の主演ドラマ「信長協奏曲」(14年)への出演を直接オファーしたり、「荒川アンダー ザ ブリッジ」(11年)に村長(小栗)と星(山田)として被り物で仲良く出演したり。特に『クローズZERO』シリーズはスタッフ・キャスト共にアツい現場だったらしく、2作目『クローズZEROⅡ』(09年)に参加した綾野剛も含め、彼らはこの世代の俳優の中心的存在となっている。

 

『クローズZERO』(ブルーレイ・DVD発売中) © 2007 髙橋ヒロシ/「クローズZERO」製作委員会

 

『クローズZERO』で、滝谷源治(小栗)と鈴蘭高校のてっぺんを巡って激しく対立する芹沢多摩雄役を長髪に無精ひげでワイルドかつクールに演じ、鮮烈な印象を残した山田。身体はそこまで大きくないのに威圧感があり、ケンカもめっぽう強いという設定も圧倒的存在感ゆえ説得力がある。鋭い眼差し、眉間によるシワ、ニヒルにくわえたタバコが、まあよく似合うこと。さらに一見ヒールと思わせておいて、実は人情も義侠心もある芹沢はハマり役だった。

 

『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』(ブルーレイ・DVD発売中) ©2016真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」製作委員会

 

芹沢のような“ワイルド”系統に通じる代表作のひとつは、債務者を通して金の恐ろしさと社会の歪みを描いた「闇金ウシジマくん」シリーズ。2010年から始まり、ドラマ3作、映画4作が作られたこの作品で、非合法の闇金業者社長・丑嶋馨を演じた彼はメガネや髭などを忠実に再現して原作コミックから抜け出てきたようだと言われ、こちらもまたハマり役と評判に。女性は風俗に、男性は強制労働に“落とし”、借金はどんな手を使ってもすべてキッチリ回収する冷酷さ、敵対する業者や自分の仕事を邪魔する者への殺気すら感じさせる凄み、闇社会で生きてきた男のすべてを悟ったような覚悟とブレなさ。丑嶋が相手を真っ直ぐに見据える時の眼差しは観ているこちらもゾクッとするほど迫力があった。2016年に『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』として最終章を迎えた際は、舞台挨拶で客席から「またやって!」との声が飛ぶなど、惜しまれつつ完結したのも納得だ。

 

『手紙』(ブルーレイ発売中) ©2006『手紙』製作委員会

 

ワイルド系で攻める彼もいいけれど、受けの芝居や静の佇まいの彼もまた素晴らしい。初主演映画『電車男』(05年)ではオタク丸出しのルックスからネットでのアドバイスを基にこざっぱりと変身する“電車男”に誰もが応援したくなる愛嬌をにじませ、その1年後には『手紙』(06年)で犯罪加害者の弟という繊細で難しい役どころを見事に演じきって、実力を知らしめた。『凶悪』(13年)では、リリー・フランキーとピエール瀧の二人が起こした凶悪事件の真相を追うジャーナリストに扮し、ある意味、狂言回し的な役割を的確に担い、『MONSTERZ モンスターズ』(14年)では特殊能力を持っていることを隠し、普通の人間として生きたいと願う男を静かに熱演。こうして作品を列挙するだけでも、彼の幅広い演技力がわかるはずだ。

 

『凶悪』(ブルーレイ・DVD発売中) ©2013「凶悪」製作委員会