若い人にソニーの印象を聞くとどういう印象を持つのでしょうか。現在のソニーの最大のビジネスドメインは私が深くかかわったゲーム事業ですし、またよく目にする広告をみると映画や音楽などのエンタテインメントや金融の印象も多いようです。
しかし、私が入社した1986年頃のソニーは完全にテレビとオーディオ、そしてビデオを中心としたAV機器の電機メーカーでした。まだ、創業者である井深大、盛田昭夫両氏も活躍されておりましたが、現場の第一線は大賀典雄社長体制でまさに大企業に生まれ変わる過程にありました。
その当時のソニーは、パナソニック(当時の松下)のモルモットと揶揄される電機メーカーから脱皮し、Walkman やCDプレイヤー、業務用や家庭用のビデオなどの数多くのヒット作を世の中に発表。創業者であり、当時の会長でもあった盛田さんのあこがれのエンタテインメント事業へ参入を果たした直後の頃でもありました。
1988年に米国のメジャーレーベルのCBSレコーズ、1989年にハリウッドの映画会社米コロンビアピクチャーズを当時まだ珍しいM&Aを実行し、手中に入れたのです。日本の企業がバブルを背景に米国の企業買収を行っていたり、1986年に発行された『MADE IN JAPAN』という盛田さんの本も話題を呼んでいた時期です。
その頃、米国はシリコンバレーが生まれる直前でかなり低迷をしており、中国はまだ企業の競合シーンには登場していない時代でした。
私は新卒でソニーに入社後、本社の(総合企画室と呼ばれていた)経営企画管理室に配属され、少なからずエンタテインメント事業に携われたのですが、その後会社のプログラムで米国でMBAをとらせてもらいました。当時、英語もあまりできなかったですし、どちらかといえば営業タイプなので、なぜそのような部署に配属され、会社のプログラムでMBAを取れるような機会に恵まれたのかと思いましたが、時代のおかげもあったのでしょう。非常に幸運だったなと思います。
Entertainment Business Strategist
エンタメ・ストラテジスト
内海州史