王道ハリウッド大作、だがこれがいい
CG映画全盛の時代に、あえて俳優がF/A-18に乗って、生身の演技を見せている。強烈な重力、それによって、震える顔の皮膚。これらはスタジオでも撮影可能だっただろうが、微妙なニュアンスまでは引き出すことはできない。前作でも、トムキャット上でも撮影したが、あまりのGにクルーズ以外の俳優のシーンは使えなかったとか。今回は用意周到にキャストのトレーニングを行い、空中での演技を見せた。それが本物のF/A-18による空撮シーンとミックスされ、本物ならでは、の臨場感を見せている。
一方、物語自体は一種のファンタジーだ。敵は実名では登場しないし、その人間の姿も出てこない。クライマックスの秘密ミッションは『スター・ウォーズ』のデス・スター破壊作戦のように見えるが、これでいい。『マーヴェリック』は前作や80年代の王道ハリウッド大作の韻を踏みながら、さらなる高みを目指している。
前作から36年。ドン・シンプソン(96年没)もトニー・スコット監督(12年没)も亡くなった。クルーズは81年のデビューから約40年。自身のキャリアを振り返りつつ、スタッフ、キャスト、そして、ファンに感謝を届ける娯楽作を作り出した。トニー・スコット監督に捧げられたクレジットは泣ける。
映画は自宅でも見られる時代になったが、そんな映画は家で見る派のオジサンたちを連れ出してくれるはず。もちろん、見てほしいのは、オジサンたちだけではない。80年代って、かっこいいぞと若者世代も見てほしい。見ておけば、上司のオジサンたちと盛り上がれること間違いなし。どうせ見るならIMAXで体感すべし。サントラも必聴盤だ。
文/平辻哲也
アメリカ海軍のエリート・パイロット養成学校“トップガン”に、天才と呼ばれた男が教官として帰ってきた。父と親友を空で失った過去を持ち、誰よりも空の厳しさと美しさを知るマーヴェリックだ。彼は守ることの難しさ、戦うことの厳しさを若者たちに教えるが、訓練生らは型破りな指導に困惑し反発する。そんな新人たちの中には、かつてマーヴェリックの相棒だったグースの息子ルースターの姿もあった。ルースターは、訓練中に命を落とした父とバディを組んでいたマーヴェリックを恨み、対峙するが‥‥。マーヴェリックはなぜ、もう一度飛ぶことを決めたのか。いま再び、熱いドラマが展開する。
監督:ジョセフ・コシンスキー
出演:トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、エド・ハリス ほか
吹替え版声優:森川智之、宮野真守
東和ピクチャーズ
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