Dec 26, 2019 column

『2人のローマ教皇』と代表作に見るメイレレスの作家性の変化

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Netflixオリジナル映画の勢いが止まらない。12月20日に配信がスタートした『2人のローマ教皇』は、アンソニー・ホプキンス、ジョナサン・プライスという名優2人が、教皇の知られざる“素顔”も演じ、今年度の賞レースにも絡んできた。監督は、かつて『シティ・オブ・ゴッド』(02年)で世界に衝撃を与えた、ブラジル人のフェルナンド・メイレレス。この『2人のローマ教皇』の魅力を、監督のキャリアも振り返りながら紹介していく。

バチカンの舞台裏を“軽やか”に描く

ローマ教皇といえば、ちょうど2019年の11月、38年ぶりの日本訪問が話題になった。広島や長崎で核兵器の廃絶を訴えるスピーチを行い、天皇陛下とも会見。ニュースでも大きく取り上げられたのは記憶に新しい。その絶好のタイミングで配信されたのが、『2人のローマ教皇』である。あくまでもローマ教皇の来日の話題は、日本を中心に盛り上がったので、そこに本作の配信を合わせたわけではないだろう。ただ、教皇来日の記憶が鮮明に残っているいま、日本ではこの映画への関心が高まるのは間違いなく、Netflixの勢いと運も感じずにはいられない。

『2人のローマ教皇』は、そのタイトルどおり、2人の教皇がモデルになっている。ドイツ出身のベネディクト16世と、アルゼンチンのフランシスコだ。第265代の教皇、ベネディクト16世は2012年に“生前退位”したことで話題となった。基本的に教皇が亡くなった時に後継者が選ばれるので、これは異例のことだった。このあたり、日本の皇室における平成の天皇の決意とも重なる。そのベネディクト16世の退位によって、次期教皇の選挙が行われる。バチカンで“コンクラーベ”と呼ばれる選挙とともに、ベネディクト16世とフランシスコの対話が進行していくのが『2人のローマ教皇』だ。

この作品、もっとも興味を引くのは、バチカンの舞台裏だろう。イタリアの首都ローマの中に、独立した“ひとつの国”として存在するバチカン市国。カトリックの総本山として知られるが、一般の観光客には目にすることができない部分も多い。『2人のローマ教皇』は、バチカンの中で撮影されたわけではないが、その内側を克明に再現している。教皇選挙のコンクラーベは、『ダ・ヴィンチ・コード』(06年)の続編である『天使と悪魔』(09年)にも出てきたが、本作はさらに内幕が細かく描かれていく。

さらに目を楽しませるのは、バチカン内部の美術や、コンクラーベに参加する枢機卿たち、スイス人衛兵の鮮やかな衣装だ。まるでテーマパークのようなカラフルさは、眺めているだけで気分が上がってしまう。一見、堅苦しそうな内容にもかかわらず、映像の華やかさと、音楽のポップな使い方(ABBAやビートルズの曲も登場)で、作品の印象はじつに軽やか。たしかに2人の教皇の対話はじっくりと描かれるし、フランシスコの過去、とくにアルゼンチン軍事政権下での苦闘も挿入されたりして、シリアスな空気が漂う時間もある。しかし、教皇とは思えないユーモラスな言動も織り込まれ、そのメリハリ感で飽きさせない作りになっているのだ。

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