つい目を引く美しさとは、生まれ持った類まれなもの。しかしそれだけでは、多くの人の心を奪うことは難しい。そんな中、ずば抜けた美しさを持ちながらも、様々な作品に出演し続け、着実に実力を着けた今、確実なブレイクを果たそうとしている俳優がいる。それが、高杉真宙だ。彼の過去作品から、いくえみ綾原作の最新出演作『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』、さらに今後控えている映画までを紹介しながら、21歳の彼の俳優としての魅力を探ってみたい。
原作者・いくえみ綾も太鼓判!『プリンシパル』でのゆるふわ系、王子様系男子
いくえみ綾原作の実写映画『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』で、高杉は病弱でいながら優しく、芯の強い桜井和央を演じている。和央と言えば、いくえみ綾作品の中でも人気が高い“いくえみ男子”。親友であるぶっきらぼうで不器用な舘林弦とはまた対極の、女の子の理想“ゆるふわ系”“王子様系男子”を見事に体現しているのだ。これには、いくえみ綾も「和央そのままだったのでとても驚きました」と話すほど。ヒロイン・住友糸真(黒島結菜)を優しく包む笑顔の裏に、悲しみや寂しさを同居させた表情は、さすがの一言。一途でとても真っ直ぐな和央の姿に、幸せを願わずにはいられない。儚さと優しさ、そして強さを、確かな演技力で表現した今作で、多くの女性の心を一気に掴むこととなるだろう。
全国区になった『鎧武/ガイム』、演技の幅をさらに広げた『渇き。』で、強烈な役柄に挑戦
2009年に舞台『エブリ リトル シング’09』でデビューを果たし、2012年には『カルテット!』で映画初主演を務めた高杉。最初に彼の存在が多くの人の目に触れたのは、『仮面ライダー鎧武/ガイム』(13~14年)だろう。端正かつ中性的な顔立ちはライダーファンのお母さまたちの心を一気に射抜くだけでなく、小さな子どもでさえ「キレイ…」とため息をつくほどの圧倒的なインパクトを残していた。ここでさらに印象を強くしたのが、彼が演じた龍玄が、可愛らしいキャラクターから邪悪なキャラに変化していく強烈なキャラクターだったということ。そのギャップを上手く演じ切り、両極端なキャラクターを見事に表現した演技の幅の広さに、多くの可能性を感じさせたのだ。
そして「ファブリーズ」のCMで、その“顔”は全国区に。その時点で“仮面ライダー”“ファブリーズの子”というイメージが広まったが、その頃はまだ、知る人ぞ知る存在だった。しかし、映画『渇き。』に出演して状況が一変。『渇き。』では、中島哲也監督のもとで、これまでのイメージを一気に崩す不良・松永役を熱演し、ファンだけでなく、観た人にかなりの衝撃を与えたのだ。爽やかで可愛らしい“陽”の部分を持ちながら、狂気に満ちた不良や邪悪な“陰”の役柄を演じることにも挑戦し、演技の幅の広さをさらに拡張。この頃から着実に行われていた、決して“清純派”“正統派”の括りには収まらない、実力派俳優としての基礎作りが、今に繋がっているのだろう。
天然の人たらし、冷酷な侵略者、感情の機微を表現した主演作――様々な役柄に挑んだ2017年の飛躍
そして迎えた2017年。『PとJK』では、複雑な家庭の事情を抱えた、狂犬と呼ばれるほどの不良を熱演。次第に友情や愛に触れて成長していく姿を見事に演じた。『ReLIFE リライフ』では、チャラくて乙女心に鈍感という王道のモテキャラを好演し、『トリガール!』では、「君、いいカラダしてる」という口説き文句でヒロインを人力飛行サークルに勧誘する、秀才&イケメンの“天然の人たらし”をコミカルに演じた。そして黒沢清監督の『散歩する侵略者』では、無表情のまま残虐に人を殺していく、まさに“静かな狂気”を爆発させた冷酷な侵略者を演じ切ったのだ。
主演映画『逆光の頃』では、京都を舞台に、毎日をやり過ごす中で生まれる高校生の感情の機微を繊細に表現。ただただ自然と流れる時間の中で変化していく気持ちの流れを、穏やかに、時に衝動的に演じる姿は、本当に彼の日常を覗いているような感覚を観る人に与えた。それは、彼の演技が至極自然体だったから。こういった演技こそ、表現力が試されるのかもしれない。
さらに、主演ドラマ『セトウツミ』も放送された。葉山奨之演じる瀬戸小吉と、高杉が演じた内海想が、延々と河川敷で放課後トークを繰り広げる作品。関西弁にも挑戦した今作は、地味そうに見えてまさかの感動のクライマックスを迎えた。原作にも、映画版にも負けないインパクトを残すドラマとなった。