ファッション業界も熱視線!トレンドが次々誕生
80年代カルチャーが人気と言っても、決して懐古主義に陥っていないのが『ストレンジャー・シングス』の魅力。スティーヴン・スピルバーグのアドベンチャーが人気を博し、いまだ根強い人気を誇る『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が封切られ、『ベスト・キット』のラルフ・マッチオが全米ティーンのアイドルだったあのころを、単に懐かしがるのではなく、その当時、ティーンたちが何をクールに感じていたのか、その感性をそのまま描き出し、80年代カルチャーの魅力を改めて提示することで、本作は現代のポップカルチャーを代表する作品になったのだ。
その魅力に、トレンドに敏感なファッション業界が気付かないはずもなく、シーズンを重ねるごとに『ストレンジャー・シングス』は注目度を高めていく。ルイ・ヴィトンがコレクションに起用し、キッズたちがランウェイに登場、エル役のミリー・ボビー・ブラウンは若干13歳でカルバン・クラインのキャンペーン・モデルに抜擢された。H&Mやナイキ、リーバイスはコラボコレクションを発表し、ポラロイド社は『ストレンジャー・シングス』モデルのインスタントカメラを発売している。ドラマに登場するアイテムへも熱視線が注がれ、劇中登場するボードゲーム『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の復刻版が人気を博し、キッズたちが乗っている自転車メーカーSchwinn社が発売した限定500台の復刻版BMXレプリカはあっという間に完売。ドラマが始まるとエルの好物である冷凍ワッフルがバカ売れし、ダスティンが着用していた恐竜の化石柄パーカーをモデルとなったミネソタ博物館が発売するや、サーバーがパンクするほど人気が殺到するなど、その勢いはすさまじいばかりだ。
シーズン3の舞台となる1985年はコカ・コーラ社が“ニュー・コーク”を発売して物議を醸した年だが、そうした社会的トレンドもドラマに盛り込み、コカ・コーラ社はキャストを起用したCMを制作するなど、その規模は年々スケールを増している。
ファッション界ではここ2年ほど、お父さんが履いているような派手でボリューミーなダッドスニーカーが流行するなど、少し前ならダサいと捉えられていたアイテムがトレンドになっている。こうした流れの中に、80年代カルチャーをクールに描いた『ストレンジャー・シングス』のスピリットが上手くフィットしたと言える。作品のクオリティとしても観る価値は大きい本作だが、トレンドを生み出すという意味でも、『ストレンジャー・シングス』から当分目を離すことはできないだろう。
文/幕田千宏
『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン3
1985年、インディアナ州ホーキンスの夏は活気に満ち溢れていた。学校は夏休みに入り、町には新しくショッピングモールができる。子どもたちには恋の季節が訪れ、大人へと成長しつつあるのだった。しかしその陰で、不気味な様子で新たな危険が迫っていた…。例の邪悪な力は衰えるどころか、力を増していたのだ。この夏がすべてを変えることに、誰も気付いていないのだった。
製作総指揮・脚本・監督:マット・ダファー、ロス・ダファー
出演:ウィノナ・ライダー、デヴィッド・ハーバー、フィン・ヴォルフハルト ほか
シーズン1~3、Netflixで独占配信中
公式サイト:https://www.netflix.com/jp/title/80057281