音楽映画がヒットする理由、これまでの歌姫主演映画との違い
この『アリー/ スター誕生』は、日本でどれくらい熱い支持を獲得できるか？ ヒットのポテンシャルが大きい作品であるのは確かだ。まずお正月映画の洋画大作で唯一、大人の観客に強くアピールする作品であること。そして何より、音楽をフィーチャーした作品であることだ。ここ数年、『スター・ウォーズ』や『ファンタスティック・ビースト』、『ジュラシック・ワールド』など予想どおりのメガヒット作は別として、洋画でサプライズ的な大ヒットを記録した作品を挙げると、『ラ・ラ・ランド』、『グレイテスト・ショーマン』、『ボヘミアン・ラプソディ』など、どれもがミュージカル、あるいは音楽がメインになったものである。
『ボヘミアン・ラプソディ』（公開中） © 2018 Twentieth Century Fox
ストーリーや俳優も重要だが、ライブのように劇場で映画を楽しむ観客が急増している。そうした観客は2度、3度とリピートする傾向もあり、音楽映画が大ヒットするサイクルができあがっているのだ。圧倒的なボーカルやダンスなどを、他の観客と一体になって楽しめるのが音楽映画の魅力で、『アリー/ スター誕生』もその流れに乗っかる可能性はあるだろう。
しかも本作の場合、レディー・ガガという世界的人気のミュージシャンが主演した、本格的な音楽映画である。過去にもこうした“歌姫”が映画に進出した話題作は数多くあった。『エビータ』（96年）のマドンナ、『ドリームガールズ』（06年）のビヨンセ……etc. それぞれボーカリストとしての個性を演技における表現力にアップデートしていた。
『ドリームガールズ』（Blu-ray・DVD 発売中） © 2006 DreamWorks LLC and Paramount Pictures. © 2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
今回の『アリー/ スター誕生』が前例と異なるのは、レディー・ガガが曲作りから大きく関与した点だ。本作のための新たなナンバーの数々は、ガガとブラッドリー・クーパーに、ルーカス・ネルソン（ウィリー・ネルソンの息子）らソングライターが協力して創作された。歌詞もストーリーやテーマに沿うものになっており、ミュージシャンが自ら手がけ、歌うという点で、過去の歌姫主演映画を振り返ると、ビョークの『ダンサー・イン・ザ・ダーク』に似ている。しかし『ダンサー・イン・ザ・ダーク』はミュージカルといえ、アート志向が強く、コアな映画ファン向けの作りだった。
この『アリー/ スター誕生』は、レディー・ガガ自身の創作力に、パフォーマンスの才能が重なり、さらにスター映画としての華やかさも兼ね備え、歌姫映画として広い観客層に届く仕上がりになっている。
文／斉藤博昭
『アリー/ スター誕生』
アリーの夢――それは歌手になること。なかなか芽が出ず諦めかけていたある日、世界的シンガーのジャクソンと出会う。彼女の歌に惚れ込んだジャクソンに導かれるように華々しいデビューを飾り、瞬く間にスターダムを駆け上るアリー。激しく恋に落ちて固い絆で結ばれる二人だったが、アリーとは反対に、全盛期を過ぎたジャクソンの栄光は陰り始めていき…。
監督・製作：ブラッドリー・クーパー
出演：ブラッドリー・クーパー、レディー・ガガ
配給：ワーナー・ブラザース映画
公開中
©2018WARNERBROS.ENTERTAINMENTINC.ANDRATPACDUNEENTERTAINMENT LLC
公式サイト：http://starisborn.jp
『スター誕生』
Blu-ray：2381円（税抜）
発売中
発売元・販売元：ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
© 1976 Warner Bros. All Rights Reserved.
『ボヘミアン・ラプソディ』
公開中
配給：20世紀フォックス映画
© 2018 Twentieth Century Fox
『ドリームガールズ スペシャル・コレクターズ・エディション』
Blu-ray：2381円（税抜） DVD：1429円（税抜）
発売中
発売元・販売元：NBCユニバーサル・エンターテイメント
© 2006 DreamWorks LLC and Paramount Pictures. © 2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
※2018年12月の情報です。
