すでに『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)で、その姿はお披露目されていた“新生”スパイダーマン。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に参戦した彼の、単独主演作『スパイダーマン:ホームカミング』が、満を持しての完成となった。本稿では、過去シリーズの『スパイダーマン』『アメイジング・スパイダーマン』を振り返りながら、『スパイダーマン:ホームカミング』の新たな魅力をお伝えする。
新生スパイダーマンの夢は“アベンジャーズの一員になること”!アクションでは空中戦も展開
『スパイダーマン:ホームカミング』のピーター・パーカーは、15歳の高校生という設定だ。トニー・スタークが開発したスーツに身を包み、日夜、ご近所をパトロールするピーター。その様子をトニーに報告し、一日も早く“アベンジャーズ”の正式メンバーになることが、彼の夢である。今後のMCU作品である『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』にスパイダーマンの登場も決まっており、どのようにアベンジャーズに関わってくるのか? そんな期待を高めるピーターの奮闘が、今回のストーリーの基本になっている。
ヒーローとしての成長には、もちろん強敵が必要だ。今作の最大の敵となるキャラクターは、巨大な翼をもったバルチャー。本名はエイドリアン・トゥームスで、職業は闇の武器商人である。アベンジャーズの戦いによってNYマンハッタンの一部が崩壊し、ガレキから見つけた地球外物質を使って、トゥームスはさまざまな武器を開発。その一つがバルチャーの翼型のアーマーだ。自由に飛行し、空中からスパイダーマンを襲う恐ろしい敵キャラである。当然、アクションも地上だけでなく、空中戦にも発展。『スパイダーマン:ホームカミング』には、過去のスパイダーマン映画とはまったく違うアクション場面が満載されている。
クモに刺されるシーンがない!? あのキャラクターとあの名言は?
過去の作品との最も大きな違いは、物語の“起点”かもしれない。サム・ライミ監督×トビー・マグワイア主演の『スパイダーマン』3作、そしてマーク・ウェブ監督×アンドリュー・ガーフィールド主演の『アメイジング・スパイダーマン』2作とも、ピーター・パーカーがクモに刺されたことがきっかけで、スパイダーマンに変身するドラマをきっちり描いてきた。今回の『ホームカミング』では、その部分をあっさりとスルー。すでにピーターは、ある程度のパワーを身につけている。そして過去の2シリーズとも、幼い時期に両親を亡くしたピーターの成長を助けるのは、ベンおじさんとメイおばさんだった。
ところが『ホームカミング』にベンの姿はない。メイおばさんがシングルマザーのごとく、ピーターの面倒を見ている。マグワイア版の1作目『スパイダーマン』では、ベンの「大いなる力には大いなる責任が伴う」という名台詞が作品のテーマに直結した。そんな重要なキャラを登場させなかったのは、ピーターにとって“父”を感じさせる、トニー・スタークの存在があったからだろう。このあたりもMCU作品ならではで、単独作品だった過去2シリーズとは一線を画している。
今回のスパイディは若い!体育会系なトムホだからこそ生まれたアクション
アクションの点でも『ホームカミング』は未体験のレベルを感じさせる。何と言っても際立つのが、ピーター役のトム・ホランドの身体能力だ。現在、ホランドは21歳。トビー・マグワイアは最初の『スパイダーマン』が公開されたときは26歳で、アンドリュー・ガーフィールドは『アメイジング・スパイダーマン』の公開時は、28歳。明らかにトム・ホランドは“若い”のである。
『ホームカミング』のジョン・ワッツ監督によると、「トムの身体能力がすばらしく、画面に出ているスパイダーマンの動きは、すべてトムが実際にやっているか、あるいは彼をパフォーマンス・キャプチャーした映像のどちらかだ」とのこと。CG化された部分もすべてホランドが実際にこなしているらしい。この点についてホランド自身は「いやいや、それは監督が大げさに言っているだけ。優秀なスタントチームの助けがあったよ」と謙遜するが、彼の身体能力は、マグアイア、ガーフィールド以上なのは事実のようだ。
11歳の頃からダンススクールで才能を見出されたホランドは、ロンドン、ウエストエンドのミュージカル「ビリー・エリオット」(映画『リトル・ダンサー』の舞台化)で主役に抜擢され、クラシックバレエからヒップホップ、タップまでさまざまなダンスの技術を磨いた。さらに器械体操やアクロバットを特訓。学校ではラグビー部にも所属する、絵に描いたような“体育会系”である。『ホームカミング』では鮮やかなバク宙もキメるが、おそらくホランドが自分でこなしているのだろう。それくらい全編にわたって、スパイダーマンのアクションがリアルなのである。