興奮と落胆、でもやめられない
その世界観とお約束に魅入られた熱狂的なファンに、毎度万雷の拍手をもって迎えられる本シリーズ。しかし、1983年の『ジェダイの帰還』以降のシリーズは、賛否両論の歴史でもある。
40年以上にわたる長い伝統を築いてきたシリーズは、世代を超えるファンを生み出した。旧三部作から劇場で観ている古参のファンは、16年も待たされた新三部作にすさまじいハードルを課していただろうし、新三部作から好きになった人にとっては、旧三部作はローテク映画に映ってしまう人もいるだろう。
そして誤解を恐れず、あえて言わせてもらうならば、『スター・ウォーズ』シリーズは素晴らしい世界観と同時に、映画的に優れているとは思えない演出が多々ある作品でもある。
旧三部作で絶大な人気を誇るボバ・フェットは、『ジェダイの帰還』で信じられないほどショボい死に方をするし、新三部作のコメディパートを担うはずだったジャー・ジャー・ビンクスは、あまりの不評に2作目以降ほぼ存在が消された。最高にカッコいい悪役ダース・モールが登場したかと思えばあっさり殺され(のちに2018年のアナザーストーリー『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』で生きていたことが判明)、アナキンとパドメ・アミダラが恋に落ちる場面は、とても2000年代の映画とは思えない、こちらが恥ずかしくなるような恋愛が描かれたりする。多少の個人差はあれど、例を挙げればきりがない。
よって、ファンたちが「こんなの俺の待ってた『スター・ウォーズ』じゃない」と言いたくなるのも十分理解できるし、なかなか期待に応えてくれないのもまた『スター・ウォーズ』の“お約束”だ。
それでも、やっぱりハン・ソロは文句なしにカッコいいし、ダース・モールとオビ=ワンの戦闘シーンにくぎ付けになる。ヨーダが大暴れするシーンに大興奮し、ミレニアム・ファルコンやR2 -D2が活躍すれば声を上げて喝采を送る。結末は分かっているのに、みんな大好きダース・ベイダーの誕生シーンには、「ついにこのシーンが観られた」と感動するのだ。
『スター・ウォーズ』シリーズはまったくもって完璧ではないし、粗が目立つ作品である。そこに散々文句を言ってもなお、その世界観に魅せられたものは、懲りずに毎作品期待してしまう。そう、結局好きなのだから仕方がないのだ。
はたしてスカイウォーカー家の物語の結末は
ご存知のように、ディズニーによるルーカス・フィルムの買収によって、現行の続三部作は創造主ルーカスの手を離れたシリーズとして歩み出した。
『シスの復讐』(05年)から10年の時を経て公開された『フォースの覚醒』は、新しい世代の物語の始まりを告げつつ、古くからのファンも喜ばせる内容で歴史的大ヒットとなった。
しかし、続く『最後のジェダイ』は、スカイウォーカーの血筋をはじめ、これまでのストーリー的なお約束をあえて排除し、新しい世代の『スター・ウォーズ』を声高に宣言。しかし、これが旧世代には突き放された印象を与え、まさに賛否両論の作品となった。
『スター・ウォーズ』シリーズは、ルーカスの手によって始まり、その伝統が築かれてきた。しかしルーカスはそこから手を引き、これからは新しい世代がその役割を担っていくことになる。
最新作のタイトルは『スカイウォーカーの夜明け』。9本に及んだスカイウォーカー・サーガは泣いても笑ってもこれが最後だ。12月20日、万雷の拍手で迎えられるあの大興奮のお約束の先に、はたして何が待っているのだろうか。ぜひ劇場でその瞬間を目撃しよう。
文/稲生稔
祖父ダース・ベイダーの遺志を受け継ぎ、銀河の圧倒的支配者となったカイロ・レン。伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーの想いを引き継ぎ、わずかな同志たちと立ち上がるレイ。スカイウォーカー家を中心とした壮大な<サーガ>の結末は、“光と闇”のフォースを巡る最終決戦に託された――。
監督:J.J.エイブラムス
脚本:クリス・テリオ&J.J.エイブラムス
出演:キャリー・フィッシャー、マーク・ハミル、アダム・ドライバー、デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック、アンソニー・ダニエルズ、ナオミ・アッキー、ドーナル・グリーソン、リチャード・E.グラント、ルピタ・ニョンゴ、ケリー・ラッセル、ヨーナス・スオタモ、ケリー・マリー・トラン、イアン・マクダーミド、ビリー・ディー・ウィリアムズ
音楽:ジョン・ウィリアムズ
2019年12月20日(金)公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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公式サイト:https://starwars.disney.co.jp/movie/skywalker.html