Apr 25, 2019 column

キャプテン・マーベル/シャザムが辿った複雑すぎる壮大な80年の歴史!

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DCとMARVEL、二人の「キャプテン・マーベル」

「キャプテン・マーベル」は、ストーリー、キャラクター設定、展開を、そのまま受け継ぐ形で再スタートを切る。ただ、フォーセット時代からひとつだけ大きな様変わりを果たすことに。それは、コミックのタイトルが「シャザム!」へと変更された点にある。

そこには大きな理由があった。

遡ること1967年、DCのライバルMARVEL社が新ヒーロー「キャプテン・マーベル」を生みだしたのだ。宇宙人マー=ベルの活躍を描いた「キャプテン・マーベル」は、MARVEL社のヒットキャラとなった。この流れで、MARVEL社は「キャプテン・マーベル」の商標登録を獲得。以降、DC側が「キャプテン・マーベル」を冠した本、映像作品、オモチャの発売はできなくなってしまったのだ。

DCとしてはめでたく「キャプテン・マーベル」復活となったものの、名称が使えない状態に。さて、どうするか? ビリー少年が変身する際に唱える「シャザム!」をタイトルにすることで、その網の目をかいくぐり抜けたのであった。

未だにファンを混乱させるのは、「シャザム!」と名を変えた後も、コミック内でのキャラクター名が「キャプテン・マーベル」のままであったところだ。これは、あくまでMARVEL側の商標権は、自社のキャラやタイトルや商品販売の際での「キャプテン・マーベル」での名前の使用だけであり、キャラクターの人格や名前までその商標権が適用されたわけではないのであった。その結果、長きにわたりDCとMARVELの両社には、キャプテン・マーベルを冠したヒーローが同時に存在することになった。

「シャザム!」のタイトルで復活したキャプテン・マーベルは、再びあの黄金期時代を彷彿させる、人気作品としての地位を確立。スーパーマンやバットマン、ワンダーウーマンらいわゆる「ジャスティス・リーグ」の面々が活躍する世界“アース1”や“アース2”とは全くの別の宇宙“アースS”を舞台に物語を展開していく。

1974年には連続活劇ドラマとして二度目の実写化。ドラマはあしかけ3年にわたり放送され、人気を博した。完全に独立した存在ではあった「シャザム!」ではあったが、スーパーマンがゲストで参加を果たしたり、逆にキャプテン・マーベルがゲストとして参加するなど、クロスオーバーも果たしながら、DCのヒーローとしてのひとつの人気を確立させていく。

大きなうねりの中、DCヒーローの物語に本格参入

1985年、DCコミック世界にひとつの一大転機が訪れる。DCのライター、マーヴィン・ウルフマンが「複数世界が存在し、干渉し合うことに混乱する」という読者からの声を発端に、全ての世界を統一させようと考案。そして「クライシス・オン・インフィニット・アース」という作品をもって、全ての世界を統一させ、新たな世界“ニューアース”を創設した。これによりキャプテン・マーベルもフォーセット時代の物語を完全にリセット。ジャスティス・リーグにも名を連ね、いよいよ装い新たに本格的にDCヒーローの物語に組み込まれていくことになったのだ。「キャプテン・マーベルに変身後も、人格や心はビリー・バットソン少年のままに」という今の設定は、この時にできたもの。それまでのキャプテン・マーベルは、個別の人格を持った存在であり、ビリー≠キャプテン・マーベルであった。この“ニューアース”後の設定は今なお踏襲され続けている。

1994年には“ニューアース”後、初となる単独作「パワー・オブ・シャザム!」がスタート。ビリーの誕生秘話や宿敵であるブラックアダムとの因縁が加わり、より少年らしさがフィーチャーされるようになったビリーのキャラクターの変更など、さらに深みが増した今作は5年にわたって連載され、存在を不動のものとした。

アレックス・ロスによる“ヒーローとは?”を説いた名作「キングダム・カム」(96年)、これまたアレックス・ロスの美麗なイラストが輝く「Shazam!:Power of Hope」(00年)を始め、「ジャスト・イマジン」(01年)、「スーパーマン/シャザム!:ファースト・サンダー」(06年)といった、シリーズでの活躍は新たなファンを獲得。その流れでマーベル・ファミリーの面々、キャプテン・マーベルの最大のライバルであるブラックアダムを始め、様々なキャラクターがDCコミックスの世界に進出し活躍していった。

この間には様々な事件が起き(「クライシス」シリーズでは、統一されたはずの別のバースが舞台になるなど、再び世界を広げた)、凄惨な戦いが長年にわたり繰り広げられた。もちろんキャプテン・マーベルもその戦いに身を賭していく。