Apr 25, 2019 column

キャプテン・マーベル/シャザムが辿った複雑すぎる壮大な80年の歴史!

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「キャプテン・マーベル」封印、DCでの復活

何をもって模倣とするか? の判断基準は混乱を極め、裁判は一進一退の攻防を繰り広げた。その裏でコミック業界は危機を迎える。1945年、第二次世界大戦が終戦すると、ジャンルの拡大化、そして暴力表現への嫌悪感の高まりから、ヒーローコミックは軒並み売り上げを下げていったのだ。

あの栄華を極めた「キャプテン・マーベル」も例外ではない。1949年には売り上げがピークの半分ほどに落ち込んだという。目まぐるしく変わる状況、それでも裁判は続く。軒並み下がるコミックの売り上げ。会社自体の存続危機に見舞われたフォーセットは、自社のコミック部門をたたむことを決意。1953年に「今後『キャプテン・マーベル』の名のついたコミックは永久に発売しない」と、DCに40万ドルを支払い、和解が成立。「キャプテン・マーベル」という権利は放棄しなかったものの、長きにわたる戦いはフォーセットにとって苦い結末をもたらした。

1953年秋頃から一連の連載に終止符を打っていき、1954年、フォーセットはキャプテン・マーベルに永遠の別れを告げた。余談だが、この間に世界中でキャプテン・マーベルの因子が活躍することに。フォーセットと提携していたイギリスのコミック会社「L.ミラー&サン」は、人気作である「キャプテン・マーベル」終了に伴い、その世界とキャラをベースに新ヒーロー「マーベルマン」を創作。以降イギリスでセンセーションを巻き起こす。しかし、「マーベルマン」(後に「ミラクルマン」に改題)も、この後、数奇な運命を辿っていくことに……。なお、ビートルズの「The Continuing Story of Bungalow Bill」(ジョン・レノン作。『The Beatles』収録)の歌詞には“キャプテン・マーベル”が登場している。いかに影響力のあったキャラだったのかを物語っている。

連載終了をもって、キャプテン・マーベルの物語はこれにて終了するかと思われていた。しかし、時をおかずして、50年代半ばに時代は“シルバー・エイジ”と呼ばれる、コミックブーム期を迎える。各社が再び新たなヒーローを生み出しては、ヒットとエポックを生み出した。その余波が冷めやらぬ1972年、DCは新たなヒーローの誕生を欲し、フォーセットから「キャプテン・マーベル」の権利を買い取ることを決断。約20年の時を経て、「キャプテン・マーベル」は復活した――皮肉なことに、あの権利を争ったDCに場を移して――。