接戦の主演男優賞は、チェイニーvs.フレディの一騎打ち
『ROMA/ローマ』は演技賞でも、本作で初めて演技をしたというヤリッツァ・アパリシオが、まさかの主演女優賞ノミネートを果たした。助演女優賞への候補入りも大きなサプライズで、作品の勢いは感じさせる。その演技賞の結果は、作品賞に比べると予想はしやすい。前哨戦の結果から、主演女優賞のグレン・クローズ(『天才作家の妻 -40年目の真実-』)と助演男優賞のマハーシャラ・アリ(『グリーンブック』)は当確。助演女優賞は、最も重要な前哨戦のSAGは逃したものの、同賞受賞のエミリー・ブラントはノミネートされていないので、他の前哨戦の結果からレジーナ・キング(『ビール・ストリートの恋人たち』)が有力。
接戦があるとしたら主演男優賞で、賞レースの前半は、20kgの増量でチェイニー副大統領になりきった『バイス』のクリスチャン・ベールが強力だったが、ゴールデン・グローブ以降は『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレックが逆転。同作はブライアン・シンガー監督のセクハラ問題などが取り沙汰されているが、ラミの主演賞には影響を与えないだろう。とはいえ、クリスチャン・ベールとは僅差の状況ではある。
近年の傾向である“多様性”、観客に愛された作品による大逆転も?
その他、監督賞は『ROMA/ローマ』のアルフォンソ・キュアロンが2度目の栄冠を勝ち取りそう。この部門でも配信系への反発が出れば、『ブラック・クランズマン』のスパイク・リーあたりが“大穴”かもしれない。ここ数年、アカデミー賞が意識しているのは“多様性”であり、人種という多様性でそのトピックを達成しているのが、作品賞ノミネート作の『ブラック・クランズマン』と『ブラックパンサー』だ。『ブラックパンサー』は、マーベルのヒーロー映画としても初の作品賞ノミニーであり、観客が愛した作品の代表でもある。その意味では『ボヘミアン・ラプソディ』も日本でも100億円突破という観客に愛された作品で、セクシュアリティの多様性もテーマにしている。混戦の作品賞の中で、これらの作品が“大逆転”を起こす可能性もゼロではない。
そして気になるのは、日本作品の行方である。今年は外国語映画賞で『万引き家族』、長編アニメーション映画賞で『未来のミライ』と、2作がノミネートされている。