Apr 21, 2018 column

映画、ゲーム、音楽…20世紀のポップカルチャーが詰まった夢のような映画『レディプレ』を徹底解説!

A A
SHARE

日本におけるゲーム業界でのクロスオーバーの系譜

今作を全体的に総括すると、近年VRの台頭が激しいことへの先見部分が感じられるだけではなく、『機動戦士ガンダム』や『トランスフォーマー』、『ゴジラ』関連に加え、サンリオ系キャラ、『ストリートファイター』等々、登場するキャラクターたちの多くが、日本が生み出したコンテンツをもとに彩られており、如何に日本のIPが世界へ通じる強力な商品だったのかと、改めて今作を観終えた後に自信を持って実感するはず。

そして今作の根底に潜む魅力は、観客のメインターゲットを、映画ファンではなくゲームファンを軸にして作られている点ではないだろうか。そんな今作を観て最初に思い浮かんだのが、30年前にファミコンで発売された『コナミワイワイワールド』。コナミ作品のキャラクターのみだったものの、キャラクターを勢揃いさせることに成功した初のオールスター作品だったと記憶している。その後には1996年に『エックスメン VS. ストリートファイター』、1997年に『マーヴル・スーパーヒーローズ VS. ストリートファイター』、1998年に『マーヴル VS. カプコン クラッシュ オブ スーパーヒーローズ』と、格闘ゲーム界でマーベル・コミックスとカプコンのキャラクターが年を追うごとに増大していったクロスオーバー作品は当時衝撃だった。1999年には任天堂からも、任天堂キャラクター総出演の『大乱闘スマッシュブラザーズ』が発売され、2014年に発売された直近シリーズ作では『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』『ロックマン』『パックマン』を登場させている。

ロボットアニメからの限定的な形で、東映やサンライズなどの会社からクロスオーバーさせたゲーム『スーパーロボット大戦』は、1991年に初代作が登場してから途切れることなく定期的に新作が現在も発売されている。この『スーパーロボット大戦』が誕生する先駆けとなったゲーム『SDバトル大相撲 平成ヒーロー場所』が1990年に登場しており、この作品では『仮面ライダー』『ウルトラマン』『機動戦士ガンダム』『スーパー戦隊』シリーズがディフォルメされて登場。その後に『メタルヒーロー』、『ゴジラ』、永井豪ダイナミックプロ作品と、シリーズを重ねるごとにボリュームアップされ続け、キャラクターが増えていったのだ。

ゲーム&コンピューター世界へ飛び込む映画と、鑑賞前に絶対に押さえておきたい一作

ゲームの世界に入り込むという意味で、『レディ・プレイヤー1』と偶然にも似た設定だった『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(17年)が直近の映画では作風が被っているが、自分の分身がコンピューターの世界へ飛び込む設定だと、古くは1982年に公開された『トロン』へと遡る。近作でポピュラーな作品だと、別世界へ入り込む『マトリックス』シリーズ(99年・03年)ではないだろうか。この手の内容は既に手垢だらけな設定なのだが、『レディ・プレイヤー1』は幾多の版権をクリアし、キャラクターたちを国境越えさせることに成功した。

最後に、まだ『レディ・プレイヤー1』を観に行ってない人に、これだけは筆者からのお願い。スタンリー・キューブリック監督作『シャイニング』(80年)だけは、絶対に観ておいたほうがいい。観ていた人と観ていない人では笑いのレベルが段違いに変わってくる。それと今作には、世のオタクたちへの強烈なメッセージが描かれている。劇中冒頭で亡くなってしまったVR世界“オアシス”の開発者ジェームズ・ハリデーみたいに、リアルな女性を知らずして世を去ってはいけないという警告が込められているのだ。つまり、インターネット世界で知り合い、現実世界で正体がどんな人か分からないという緊張感を抱えながら、勇気を出してリアルに顔合わせすることで生まれる出会いを、本編を通して発生する友情と共に推奨していますので。

文/ジャンクハンター吉田

作品情報

『レディ・プレイヤー1』

今から27年後。人類はすべての夢が実現するVRワールド“オアシス”に生きていた。食べたり眠ったりトイレに行く以外は、すべてオアシスで行う。そこは、なりたいものになれる場所。無敵のヒーローやハーレークイン、キティにだって。憧れのヒーローの姿で歩き回ったり、大きな乗り物に乗ったり、何でも出来る夢の世界なのだ。ある日、オアシスの天才創設者から遺言が発表される。“オアシスに眠る3つの謎を解いた者に全財産56兆円と、この世界のすべてを授けよう”――。突然の宣告に誰もが沸き立ち、56兆円を巡って、子供から巨大企業まで全世界が参加する壮大な争奪戦が始まる。

『レディ・プレイヤー1』 原作:アーネスト・クライン著「ゲームウォーズ」(SB 文庫) 監督:スティーヴン・スピルバーグ 脚本:ザック・ペン 出演:タイ・シェリダン、オリビア・クック、マーク・ライランス、サイモン・ペッグ、T・J・ミラー、ベン・メンデルソーン、森崎ウィン 配給:ワーナー・ブラザース映画 公開中 © 2018WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED 公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/readyplayerone/