Apr 21, 2018 column

映画、ゲーム、音楽…20世紀のポップカルチャーが詰まった夢のような映画『レディプレ』を徹底解説!

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映画&ゲームも20世紀カルチャーが満載!しかしただのオッサン向け映画ではない

アーネスト・クラインが書いた長編小説『ゲームウォーズ』の映画化ではあるが、前述した通り、多くのキャラクターをクロスオーバーで登場させるのに、大御所監督のネームバリューを活用した結果、まさにそれが功を奏した形で大成功した。日本での公開は少々遅いが、海外では公開後1週間も経たずして、全世界興行収入2億ドルを突破し、瞬く間に巨額な製作費を回収できたのだ。

着目すべきは『エルム街の悪夢』(84年)のフレディ・クルーガーや『チャイルド・プレイ』(88年)のチャッキーなど、80年代を代表するホラー映画のアイコニックなキャラクターが多い中、90年代にヴァイオレンス描写で度肝を抜かしたゲーム『モータルコンバット』(95年に実写映画化されたり、アニメ版も作られている)からゴローが登場したり、全米では90年代前半にマリオを凌ぐ人気を博したソニック・ザ・ヘッジホッグが出る他、『トゥームレイダー』のララ・クロフト、Xboxの大ヒットゲーム『Halo』のマスターチーフなど、2000年代を代表するゲームキャラもチラホラ劇中にモブキャラとして出演している。アニメやゲーム、映画のキャラクターを書き始めたらキリがないので、自分自身の目で何度も鑑賞して、隠れキャラを探す感覚で確認してほしい。一方で、幅広い年代層へアプローチしていることから、決して懐古主義なオッサン向けだけの映画ではないことが伺えるので、80年代の輝かしいカルチャーの洗礼を味わったことのない若い世代の観客もまずは一度鑑賞してから判断してもらいたい。

『レディ・プレイヤー1』大成功の鍵はオタクな脚本家の功績

世界規模で大ヒット中の今作だが、どうしてもスピルバーグ監督の名前が筆頭に挙がる…が、筆者が一番注目しているのは脚本。原作者のクラインが書いた脚本をザック・ペンがリライトして完成させたわけだが、そのザック・ペンは、『アベンジャーズ』(12年)を筆頭に、多くのマーベル系映画で脚本を担当している。かつて『ATARI:GAME OVER』(14年)なる、ATARI 2600というゲーム機で発売された『E.T.』のゲームが大量生産された挙句、思ったほど売れなくて残った不良在庫がニューメキシコに埋められている…という都市伝説を信じて発掘しに行くドキュメンタリーを撮ったこともある人。そんな男がスピルバーグ監督と仕事ができたアメリカン・ドリーム、そして『E.T.』のゲームを発売していたATARI社の当時の親会社はワーナーだった関係で、『レディ・プレイヤー1』への参加は人生の悪戯か、もしくは宿命だったのかもしれない。

ペンは古くからのゲームマニアで生粋のオタクであり、80年代の少年時代に多くのコンテンツを湯水の如く味わっていたこともあって、彼が作り上げた脚本の大部分は自身をオーバーラップさせたエッセンスも多々入っているという。原作者のクライン含め、本物のゲームマニアが書いた脚本は、スピルバーグ監督をシナリオからハンドリングして、実写パートとCGパートの絶妙なバランスを生み出した。スピルバーグは本人も語っているように自分で脚本が書けないので、ゲームやアニメに詳しく、屋台骨を支えてくれたペンの功績を大きく讃えているようだ。本作が関係しているかどうかは知らないが、ペンはマーベルとの長い関係を終了させたらしく、次回作は同じくワーナー製作の『スーサイド・スクワッド2』の脚本に参加が決定している他、ジャッキー・チェンが再び出演する『ベスト・キッド』リメイク版続編も動き始めている。マーベルからDCコミックスへ切り替えたり、『ベスト・キッド』に関わったりと、どんだけオタクで80年代コンテンツが好きなんでしょうかね。