Sep 19, 2020 column

『日本沈没2020』テーマに主語を付けたことで見えるもの

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終わりの見えないコロナ禍の中、世界規模(というかそれぞれの国)で表面化してきたのがナショナリズムの台頭だ。

先日、アメリカのコロナ禍と「ブラック・ライブズ・マター運動(BLM)」についてを社会学や政治学の視点で見ていくというTV番組を見ていたところ、その中でアメリカの政治学者がアメリカの現状をナショナリズムの台頭だけでなく「それぞれが自身のアイデンティティーを主張し対立が起こっている」と語っていた。同時に「アメリカ人が共有してきた“ナショナル・アイデンティティー(国民意識)”が崩壊してきて、左派も右派もそれを考えなくなった」とも。

見ていたのはアメリカの現状についてを描いた番組だったが、語られていることの多くはそのまま日本の“今”にそのまま重なった。では日本の、日本人のナショナル・アイデンティティーとは何なのだろう。

"JAPAN SINKS:2020"Project Partners

そんなことを思いながら番組を見ていた。それを考えることは“この先”に想いをはせることにも繋がる。大仰に書けば「日本とは何か」「自分も含めた日本人とは何か」でもあるが、日本を国家と考えるか古くからの“くに”と考えるか。日本人を民族と考えるか社会にいる国民個々のことと考えるのか。

この部分は人によって前提が異なるので正解なんてものは無いと思うが、しかし現実はそれを押しつけ自分と異なる考えの人間を排斥しようとする者もいるわけで、それが前記したナショナリズムの台頭にも繋がり、コロナ禍がそれを可視化してしまった。

なんか政治的な話を書こうかとしているように思われてしまいそうだが違うのだ。そんなことをぼんやりと考えている中で、Netflixで7月から配信されている湯浅政明監督のアニメシリーズ『日本沈没2020』が自分にとってなんであったのかがようやくうっすらと見えてきたような気がしたという話なのだ。

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11月13日からはシリーズ全10話を監督が再編集し音響を5.1ch仕様とした劇場版『日本沈没2020 劇場編集版 -シズマヌキボウ-』も全国公開される。

作品公式サイト:
https://japansinks2020.com/

配信開始と同時に一気見をしたもののずっとモヤモヤと引っかかり続けていたのだが、その引っかかるものの正体がわからない。おそらくそれは僕だけではなく、まともに受け止めてしまった人にとっては即座に感想が出てこない。

配信直後に肯定する部分にしろ否定(あるいは批判)をするにしろ、ネットで目にした脊髄反射的な賛否は僕の中でどれもピンとこなかったし、批判に散見されたナショナリズムに基づいた反応に至ってはかなり首を傾げてしまった。配信開始から1ヶ月以上たっていくつかのメディアで同作についての面白い評を目にしたが、考えを整理して「私はこう捉えた」と伝えるのにそれだけの時間がかかってしまう作品なのだろう。

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僕もようやく、前記した番組を見ていたときにふと、つまるとここの作品はそれだったのではないかと思ったのだ。様々な物(アイデンティティー)がこびりつき、形が明確で無くなってしまった日本の“ナショナル・アイデンティティー”を、化石の発掘作業のように掘り出し削り取り浮き上がらせていったのがこの作品だったのではないか。

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