Jun 29, 2020 column

配信時代の変化が映画に問う100年をへての新たな課題

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Netflixで配信が開始された長編アニメ映画『泣きたい私は猫をかぶる』をさっそく見た。見終えたときに爽快感と何とも言えない幸せな気分がある秀作で、「ああ、映画館で見たかったなあ」とつくづく思わされてしまった。が、今回書くことは作品そのものの話とはちょっと外れる。

もともと『泣きたい私は猫をかぶる』は6月5日に全国の映画館での公開が予定されていた劇場用長編アニメーション映画だ。それが変更となったのは初春からの新型コロナウイルスの感染拡大の影響による。この春は新作映画のほとんどが公開延期となった。不安やリスクがある中では観客もうかつに劇場に足を運べない。そもそもその映画館自体も多くが休業や上映の大幅縮小となってしまった。日本映画製作者連盟によれば映画配給大手12社の今年4月の興行収入は前年同月比で96・3%もの減であったそうだ。

この「公開延期」というのが厄介だ。単純に公開を後ろにずらせばいいものではなく作品によってこういう時期でないとメインターゲット層の集客が望めないということに繋がる。そもそも一体いつであれば「安全である」と言い切れるのかもわからない。どうにも目処が立てにくい。

(C)2020 「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員会
(C)2020 「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員会

『泣きたい私は猫をかぶる』も4月下旬にとうとう公開日の延期が発表された。やはりか…と思った矢先、それから2日もたたずして「劇場公開を取りやめ、6月18日からNetflix世界独占配信に変更する」という発表がされた。これには多くのアニメファンが驚いた。アニメ業界の関係者などはもっと驚いたようだ。

4月下旬といえばまだ各社の判断が交錯していた時。その中で「延期」ではなく「配信への変更」というのは他に先駆けた予想外の決断だった。まさに急転直下だ。当然、製作側にとってはNetflix側の条件などが折り合い、ビジネス的な目処もついたからこそのこの早い決断だったのだろう。