Nov 25, 2017 column

プラモ業界で起きている「美少女プラモ戦国時代」とは?

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言葉で書くと簡単だが、人型キャラクターというのはロボット以上に複雑で微妙な曲線の組み合わせで描かれている。頬の曲面がほんの少し違ってしまうだけでそれはもう可愛くなくなってしまう。いくら設計にデジタル技術も取り入れられるようになったとはいえ、プラモデルにおいてこの微妙なラインを“ちゃんと可愛く”再現するのは簡単ではない。それゆえに美少女プラモというのはほとんどリリースされてこなかった。しかし同社のプラモは可愛かった。しかもアクションフィギュアブームの中、これらもまた固定ポーズでは無く可動モデルだったのだ

いくつかの製品の後に出た人気ゲーム『ファンタシースターオンライン』の「レイキャシール」、『ゼノサーガ』の「KOS-MOS」といったリアル等身の美少女キャラクタープラモは15cmほどという他メーカーの完成品可動フィギュアとほぼ同サイズ。塗装が難しい肌色はもちろん、多くのパーツはあらかじめ色分けされている。特筆すべきは、模型でこのサイズのフィギュアを作る際の最大の難関でありストレスであった“眼”があらかじめ顔パーツにプリントされていた。なにしろこの大きさのフィギュアの瞳は米粒並の大きさだ。その塗装のハードルが無いことはとにかく大きい。パーツの合いも良く組み立てやすい。

その先に生まれたのが『フレームアームズ・ガール』だった。コトブキヤが長年展開しているオリジナルのロボットプラモ製品シリーズ『フレームアームズ』の美少女キャラクター化という色物的な企画であったが、同社がそこまでに培った美少女プラモ開発のノウハウがふんだんに持ち込まれている色分けされている各パーツ、顔(眼)はあらかじめプリントされており、模型経験が無い人でも塗装をせずとも組むだけで楽しめるが、腕に覚えがある人ならプラモデルであることを活かし、好みの色に塗装することもオリジナルの改造を施すことも可能だ。同社が発売している別売りの武器などのオプションパーツを組み合わせて簡単にオリジナルのカスタマイズもできる

『ストライクウィッチーズ』や『武装神姫』などで「メカ+美少女」ものに人気のあるイラストレーター・島田フミカネのデザインによる第1弾『轟雷』は初回出荷分が言葉通り“瞬殺”であった。シリーズラインナップが次々とリリースされたが、いずれも即完売。模型雑誌などによればとにかく『フレームアームズ・ガール』は完全オリジナル企画のプラモデルとしては過去に類が無いほどの大ヒット製品となったそうだ。今年春にはアニメ化をしたが、このことによってそれまで美少女可動プラモとは無縁であった人らが手に取ったことも大きい。大手メーカーでは無いゆえ、即座に増産が難しいのが悩ましいところだが、最近は比較的入手もしやすくなってきた

この『フレームアームズ・ガール』の大ヒットが「美少女プラモ戦国時代」の幕を開いたと言っていいだろう。今では可動/非可動のキットが多くのメーカーから発売されており、それぞれに見所や楽しみ方の個性がある。マックスファクトリーの『PLAMAX minimum factory』は非可動・固定ポーズだが、1/20という小さいサイズからは想像できないほど各部が細かく、あらかじめパーツごとに色分けされている。(そのサイズで眼もあらかじめ印刷済み) バンダイの『フィギュアライズバスト』という胸像モデルからは『ラブライブ!サンシャイン!!』や『初音ミク』などの美少女キットが発売されている。これは胸像ゆえにちょっと大きめだが、その頭部の大きさを活かして驚くべき“眼”の再現技術を行っている。「レイヤードインジェクション」という独自の技術によって、“瞳”が白目・虹彩・黒目・ハイライト・輪郭…といった細かい色ごとに分けられているのはもちろん、それが全てカッチリ組み合わさった状態で最初から1パーツになっている。いったいどういう技術でどうなっているのか?我が目を疑う代物で、機会があれば一度模型売り場などで現物を見ていただきたい。一目見れば模型に造詣が無い人であってもビックリするだろう。